森田成一×杉山紀彰、エネルギーが詰まった「BLEACH」第3クールは「起承転結の『転』」
TVアニメ第3クール『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』が10月5日(土)より、テレ東系列ほかにて放送がスタートする。 【写真を見る】『BLEACH』第3クールを語る杉山紀彰と森田成一 久保帯人の同名人気コミックが原作。2004年10月よりアニメ放送が開始され、原作20周年プロジェクトとして「千年血戦篇」のアニメ化が発表された。全4クール中の第3クールとなる「相剋譚(そうこくたん)」は、零番隊とユーハバッハ親衛隊との戦いから描かれる。 今回は、主人公の黒崎一護役の森田成一と、一護の同級生で滅却師(クインシー)の数少ない末裔・石田雨竜役の杉山紀彰にインタビューを実施。本作のことはもちろん、お互いの印象や『BLEACH』の世界に入るなら? といった質問にも答えてもらった(以下、第2クールまでのネタバレが含まれます)。 ――まずは第2クールを振り返って率直な感想をいただければと思います 森田「今思うと、第1クールが始まったとき相当な興奮状態だったなと思います。僕たちも盛り上がっているのですが、それ以上にファンの方たちの反響がすごかったんです。子供のころに学校から帰ってきて『BLEACH』を見ていた世代が、『あのとき見ていたアニメがパワーアップして帰ってきたこと』にすごく興奮していて...。その反響に影響されるように僕たちの気持ちも一緒になって盛り上がっていました。一方で第2クールは、全体的にどういうところをブラッシュアップしていこうか、と落ち着いた雰囲気で取り組めたと思います」 杉山「第2クールは、熱量や展開、画の迫力も第1クール以上でしたし、久保先生が掘り下げてくださった原作にはない他のキャラクターたちのエピソードも描かれていたので、純粋に作品のいちファンとして嬉しかったですね」 ――そうした他のキャラクターを掘り下げるシーンが多いなか、おふたりはご自身の役とどう向き合っていたのでしょうか 森田「登場回数が少ないが故に、感情のつながりや成長過程が見えず、自分のモチベーションを保ち続けることができるのか不安は大きかったです。そんななかでも、今まで見たことがなかった一護の零番隊との修業が描かれていたので、とても助かりました。原作というガイドブックがない状況で演じなければならなかった分、監督や久保先生にも意見を伺い、一護としてどう感じるのか、細かく自分自身を観察しながら作っていた第2クールでした」 杉山「アニメでは、週刊連載の漫画として尺を割くのが難しかった他のキャラクターの現在が描かれているので、確かに一護と雨竜のシーンは少なかったです。分割4クールというなかで、2人の関係性はある意味で縦軸になっているので、後半の第3、第4クールでギュッと描かれるのではないかと期待していましたね」 ――第3クールを演じるにあたって、演技面で変化させたところがあれば教えてください 森田「千年血戦篇全体で言うと、演技の仕方や声の出し方は(初期とくらべて)大幅にイジっていますが、第3クールに関しては、第1クールで変えたところを地続きに演じていました」 杉山「雨竜って、目的と考えがあって星十字騎士団(シュテルンリッター)側にいると思うんですよ。第2クールの一護と会話をするシーンでも、展開を知っている分『このぐらいのニュアンスを見せてもいいかな』と演じたのですが、初めてアニメで『BLEACH』を見た方が、なぜ雨竜がそっち側に行ってしまったのか?と感じるような『原作を読んだときの読後感を重視したい』という監督や久保先生の意向もあって、ニュアンスでの録り直しがよくありました。現時点ではお伝えできないこともあるのですが、第3クールでもいろいろと模索しています」 ――おふたりが演じる一護と雨竜は、千年血戦篇全体や第3クールでどんな成長や行動をしていくのでしょうか? 森田「今回は今までで一番強大な敵です。眼前に『勝つことは不可能なのか』という絶望を突きつけられている状態で戦うので、今までのバトルとは違いますし、一護としても成長の仕方が変わってきた印象を受けますね。今回の千年血戦篇は、肉体的なものや技だけでなく、精神的な強さにも重きを置いていると思います。母親の真咲のことを含め、耐えがたい出生の秘密、自分を破壊しかねない状況のなかにいながらも、それに耐えて本当の強さを身につけていく...そういったところが、今回の一護の新しい成長なのかなと思います」 杉山「『BLEACH』では、いろんなキャラクターの成長や葛藤があると思いますが、千年血戦篇での雨竜は、自分が今まで抱えてきた思いに決着をつけるため、自分の信念を貫きます。そのあたりが丁寧に描かれているので、今回の第3クール、そして第4クールを楽しみにしていただければと思います。あまり多くを語るとネタバレになってしまうので、このぐらいで勘弁していただけたら(笑)」 ――今回、分散収録が主だったそうですね。それぞれの収録現場での雰囲気を教えてください 森田「雨竜がいないので悲しい部分はありましたが、井上織姫(CV.松岡由貴)、四楓院夜一(CV.ゆきのさつき)、茶渡泰虎(CV.安元洋貴)、志波岩鷲(CV.高木渉)とずっと一緒だったので、昔のまんまの雰囲気で楽しかったです。『BLEACH』の世界では、バトルよりも過酷なのが心情描写です。一言のなかに、裏の意味が隠されている分、いかに『台詞の裏を取れる喋り方ができるのか』が大きな課題になるので、収録のときはものすごく集中しています。ただ、その状態のままだと見るもの・感じるものが独りよがりになるので気をつけなければならないのですが、あのメンバーが揃うと、いい意味で気が抜けるんですよね」 森田「そうやって『先週録ったばかりだよね?』というほど昔と変わらず始められたのは嬉しかったです。他のチームの人たちや先輩たちも『BLEACH』の現場に来て、とても楽しかったそうです。先日、速水奨(藍染惣右介役)さんとお話したのですが、中尾隆聖(涅マユリ役)さんなど、死神チームが『懐かしいね。嬉しいね!』と写真を撮っていたらしいんです(笑)。アニメでは激しい戦いを繰り広げていますが、現場は穏やかで朗らかに楽しめるのが『BLEACH』のいいところなのかなと思います」 杉山「滅却師(クインシー)チームも和やかに収録しているのですが、現世チームの和やかさとはまたちょっと違います」 森田「新しい人が多いからね」 杉山「梅原裕一郎(ユーグラム・ハッシュヴァルト役)くんは、すごく真面目で物静かなタイプなので、落ち着いた雰囲気の会話になりますね」 森田「低いトーンで、いい声で(笑)」 杉山「菅生隆之(ユーハバッハ役)さんからは『このスタジオの先に昔から行ってる美味しいコロッケ屋さんがあるんだよ』と、大先輩ならではの知見を教わりました(笑)。そう考えると『BLEACH』は、幅広い世代のキャストさんが出ていらっしゃるのが興味深いし、楽しいところだなと思います」 森田「ときどき僕たちのところにも新しいメンバーがくるのですが、若い子たちはみんなとても緊張しているんです。ある収録スタジオはロビーが広くて、ソファーがいっぱいあったのですが、若い子たちが広いロビーの端っこに座ってずっと台本とにらめっこしていました(笑)」 杉山「別に僕たちは若い人たちに圧をかけているつもりはないのです(笑)。僕たちが長編アニメ作品にお邪魔するときの緊張感と似ているのかなと思います」 森田「そんななかで、僕たちがワイワイガヤガヤとやって『こういう現場なんだよ』と知ってもらうと、自然と体や顔がこちらに向いてくる。そうすると『しめたもんだ』と話に混ぜて、リラックスしてもらえます。これは、千年血戦篇ならではの新しい出来事だと思います」 ――もしも、森田さんと杉山さんが『BLEACH』の世界に入るとしたら、現世、護廷十三隊や滅却師(クインシー)など、どのコミュニティーで過ごしたいですか? 森田「すぐに粛清されるので、絶対に<見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)>はイヤです!」 ――(笑) 森田「そう考えると僕は、空座第一高等学校ですね(笑)。ポジション的に言うと、全然物語に絡んでこない図書委員とか」 杉山「原作の1、2巻で見切れるモブキャラみたいなね(笑)」 森田「学校が虚(ホロウ)に破壊されて『急に爆発したぞ! ガス爆発か?』みたいなことを言っている人がいい。巻き込まれたくないです。どこに行ったってヒドいんですから!」 ――確かにそうですね(笑) 森田「本編の中で唯一行きたいとすれば、護廷十三隊の四番隊ですかね~。なぜなら、前線に立たなくていいからです(笑)。でも、千年血戦篇に関しては、四番隊が大活躍しているんです。疲弊して傷ついた隊士たちが多くいるなか、四番隊の働きはスゴい。隊長の卯ノ花烈(CV.久川綾)さんがいなくなり、じつは一番癒されなければいけないのは四番隊なのではないか、というなかでのあの奮闘ぶりは素晴らしいなと思います。理想としては、戦いのない状態での四番隊がいいですね」 杉山「僕も現世のキャラがいいなと思うのですが、<見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)>にも少しだけ憧れるところがあって」 森田「え~!」 杉山「影の空間で生きているということは、凄く広いところにも住めるということですから。そう考えたら、こんなに贅沢なことはないなと思います」 森田「たとえば東京の影だとどこが一番いいですか?」 杉山「井の頭公園の近くとか自然が多いところがいいですね」 森田「癒されたいだけ(笑)」 ――(笑) 杉山「癒されたいんですよ(笑)。むしろ猫しかいなくていい。<見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)>の世界で、猫だけいっぱい飼って好きに過ごしていいよと言ってくれる世界だといいですね」 森田「...想像したけどすごいですね(笑)」 ――おふたりとも、やはり戦わない選択をされるんですね 森田「疲れますから。だって20年以上戦っているんですよ?」 杉山「毎週のように刺客が来ますからね」 森田「僕、生まれてこの方一番言った言葉が『卍解』ですから」 ――(笑)。森田さんと杉山さんは本作で共演されて約20年。お互いの印象に変化はありましたか? 森田「変わらないですね。杉山くんは『同世代なのにこんなに違うんですか』と言うくらい真面目なままだし、いつもリスペクトしています。尊敬できるからこそ任せられる部分もあって。『このかけあいのシーンどうしようか』というときに、下手すれば5、6個アイデアが浮かんで迷うときがあるんです。そんなときは、杉山くんの意見を聞いて決めることもあります」 杉山「森田さんは原作に対する理解と愛情がものすごいです。最初のテレビシリーズのときもコミックを持ってきて『このページの一護の表情だと、この芝居はやりすぎかな』と熱心に考えて監督に相談されていらっしゃったんです。先ほど、森田さんがおっしゃっていた意見を聞いてくださるお話でも、いろんなキャストさんとディスカッションをするから、他の人たちもきっと演じやすかったと思います。芯の部分で作品を大事にしているのは、初期から現在に至るまで変わりません。こういう方が座長でいてくれて本当に助かりますし、作品としても素敵なことなのではないかと思います」 ――最後に第3クールの見どころを教えてください 森田「第2クールから引き続き苛烈な戦いが繰り広げられていきますし、ここからさらに物語が濃縮されていくのが第3クールだと思っています。台本も映像もエネルギーが詰まった状態になっているので、各キャラクターの心情であったり、つながりであったりを見逃さないようにしていただきたいです。『BLEACH』は、超一級のエンターテインメント作品ですが、さらに深いところまで突いていくのがこの『相剋譚』だと思います」 杉山「今回分割4クールで、第3クールは起承転結の『転』にあたるのですが、第3クールを最後まで見ていただくと、まさに『転』になったと感じていただけると思います。ぜひ、第3クールの最終話まで楽しみにしていただけたら嬉しいです」 取材・写真=浜瀬将樹
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