長谷部誠26歳「圭佑と同じ便なの、内緒にしてくれないかな」“移籍騒動渦中”の本田圭佑とドイツの空港で…清武弘嗣も憧れた“気遣い伝説”
ドイツの空港で本田としばらく話し込んだのち…
思い出すのは、南アフリカW杯の前年。2009年12月19日のこと。 長谷部はこの日、年内最終戦を終え、フランクフルト国際空港に直行した。搭乗手続きをしていると、同じ便のチケットを買おうとしている本田圭佑の姿に気づいた。なお当時の本田はオランダのフェンロからの移籍が迫っており、PSVとCSKAモスクワが争奪戦の様相を呈していた。W杯前年ということもあり日本メディアが動向を連日のように報じていた。 本田としばらく話し込んだ長谷部は筆者のもとへ戻ってきて、こう話した。 「圭佑がオレと同じ便に乗ることは日本のメディアの人たちには内緒にしておいてもらえないかな?」 果たして、成田空港に到着した長谷部は――空港で待機していた日本メディアを引き連れて、人通りの少ないエリアへ行き、そこでゆっくり取材に答えた。 一方、日本メディアが血眼になって追っていた本田は、その後にひっそりとゲートを出て、空港を離れたという。
長谷部がザックに“主将交代案”を提案した日
このように、長谷部はキャプテンマークをたくされる前から気遣いを見せていた。そしてザッケローニ監督に正式にキャプテンとして指名されて以降、ますますリーダーらしく振る舞うようになった。 そんな長谷部が“らしくない一面”を見せていたことがある。2012年10月のヨーロッパ遠征、ブラジル戦でのことだ。0-4で敗れた直後、本田たちは結果に惑わされず、チームの可能性や伸びしろに目を向けることの意義を熱弁した。 ただ、長谷部は少しだけ違った。 「長友(佑都)とか圭佑とかは『W杯優勝』を公言してやっていて。ただ、その温度差があるわけじゃないんだけど、僕は試合にも出ていないし(※当時、所属クラブで干されていた件は第1回で記した)、その中で世界のトップを目指すことの難しさも正直、感じているし……」 ブラジル戦の2日前、長谷部はザッケローニ監督に個別に話をする機会を設けてもらっている。 「今の自分が置かれている立場を考えると……もう少し若い選手にキャプテンを任せるのも良いのではないですか?」 長谷部がそう話すと、ザッケローニ監督からはこんな答えが返ってきたという。 「君がいることで、他のメンバーは安心してプレーできている。30年の監督キャリアの中でたくさんのキャプテンと出会ってきた。しかし、君のような素晴らしいキャプテンは他に1人しか知らない。それはパオロ・マルディーニだ」 それほどの信頼を聞かされた長谷部は、後に「監督に言ってしまったことを後悔したんです」とも話している。
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