トミージョン手術から復活を目指す〝都立の星〟巨人の育成右腕・伊藤優輔「時間をかけさせてもらった分、結果として恩返ししていかないといけない」
【G戦士の鼓動】巨人のファームで研鑽(けんさん)を積む選手を中心にクローズアップするウェブ連載「G戦士の鼓動」(随時掲載)。それぞれの奮闘記を描く。第15回は支配下復帰を目指す育成の伊藤優輔投手(27)。 もう不安はない。強烈な日差しが差し込む中、川崎市のジャイアンツ球場で鍛錬に励む伊藤の表情は、充実感に満ちあふれていた。プロ4年目を迎えた育成右腕が支配下返り咲きに向けて、順調に歩みを進めている。 「長い期間のリハビリでたくさんの人に支えられながらやってこれた。今は野球ができる幸せを感じながらできている」 社会人の三菱パワーから2021年にドラフト4位で入団してからは、いばらの道を進んできた。1年目の7月に右肘痛を発症。9月には3軍戦で実戦復帰は果たしたが、11月に右肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を受けて、オフには育成選手として再契約した。 即戦力として期待されて入団してからはや4年。1軍で活躍する不動の4番・岡本和、岸田らと同い年の右腕は、さまざまな感情が交錯しながら、リハビリに励む日々だった。 「他のリハビリ選手と違って自分は若くなかったので、戦力になっていないもどかしさがありましたね」 実戦復帰してからも思い描いたようになくならない右肘の違和感。自身と同じトミー・ジョン手術を経験して完全復活した山崎伊、堀田ら後輩に意見を求めた。「(2人は)2年半ぐらいたったら(違和感は)なくなってくるといっていた。やっぱり時間なのかと思いました」。後輩の言葉を心に刻み、前を向いた。 手術から約2年半がたった今季。経験者たちの言葉通り、時間とともに抱えていた不安が徐々に取り除かれていった。春季キャンプから課題の一つだった制球力も改善され、「自信をもって投げられているのと、肘の不安がなくなったのが大きい」とうなずく。ここまでファームで23試合に登板し、2勝0敗、防御率1・13。登録期限となっている7月末までの支配下復帰へアピールを続けている。 「リハビリ期間は(野球を楽しむ)原点に戻れたいい時間だったし、時間をかけさせてもらった分、結果として恩返ししていかないといけない」。紆余(うよ)曲折を経た都立小山台高出身の〝都立の星〟が2桁の背番号を取り戻す。(樋口航)