イオン九州の店舗に設置された衣類などの回収ボックス（11日、福岡県粕屋町のイオン福岡店で）

　九州の小売店で、家庭で着なくなった衣類を無料で回収する取り組みが広がっている。国内では7割近くがゴミとして廃棄されているとされ、リサイクルを促して有効活用につなげる狙いがある。消費者の環境意識が高まる中、企業イメージへのプラス効果も期待している。（佐藤陽） 【写真】使用済みのペン、資源化しませんか…山口県下関市と「パイロット」が回収ボックス設置

再生素材で商品

　「服から服へ」。今月中旬、福岡県粕屋町のイオン福岡店を訪れると、こう記された緑色の回収ボックスが設置されていた。イオン九州（福岡市）は2022年から、各地の店舗で回収イベントを複数回、開いたところ好評だったため、9月から九州内の主な大型店42店にボックスを常設した。イオン以外で購入した品も受け付ける。

　帽子やぬいぐるみなども対象で、回収後は、専門業者がポリエステルや綿などを取り出し、再生素材を使った商品を開発したり、再販したりする予定だという。イオン九州の担当者は「二酸化炭素（CO2）の削減にもつながる。買い物のついでに不用品をボックスに入れてもらえれば」と話した。

　ディスカウント店のミスターマックス・ホールディングス（福岡市）は1月から福岡県内の店舗で回収を始めた。現在は県外を含む全56店にボックスを置き、8月までに45トンほどが集まった。百貨店の博多阪急（同）も5月から館内にボックスを常設し、専門業者が引き取って、再販したり再生ポリエステルなどに加工したりしている。

CO2削減にも

　各社が衣類の回収を強化した背景には消費者の意識の高まりがある。環境省の推計では、衣類1着当たりの製造で排出されるCO2は約25キロ・グラムに達し、浴槽11杯分の水が使われる。一方で、服を手放す際の手段として店頭で回収されたり、古着として販売されたりして再利用される割合は約3割にとどまる。

　こうした状況を踏まえ、政府は今年8月、30年度までに家庭から廃棄される衣類を20年度比で25％削減する目標を決めた。消費者側の意識を更に高めるためにも、身近な小売店の取り組みが急務となっており、今後も回収する店舗は広がっていきそうだ。