【パリ五輪】SNS上の“攻撃”に傷つく選手のケアは…「批判」と「誹謗中傷」の違い
誹謗中傷で問われる法的責任
誹謗中傷は人の心を傷つける重いもの。代償として、誹謗中傷を行った側は法的責任を問われる可能性がある。 誹謗中傷が「名誉棄損」(刑法230条)に当たる場合は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金が科せられる。 「侮辱罪」にあたる場合は、刑罰として拘留または科料が科せられる。名誉毀損との違いは、「事実の適示」の有無だ。 その他、虚偽の風説を流布して、信用を毀損したり、人の業務を妨害したりすると「信用毀損(きそん)罪と業務妨害罪」、悪口のとどまらず「やってやるぞ」など相手の生命、身体等に害を加える旨を告知すると「脅迫罪」、誹謗中傷の内容によっては「強要罪」に問われる可能性もある。 上記は刑事責任だが、民事では、損害賠償、名誉回復措置などで責任を問われうる。
IOCもはじめて大会期間中の「心のケア」へ対応
4年に一度の大一番へ向け、代表選手たちは心身を極限状態まで追い込む。鋼のメンタルを持つ猛者もいるが、それでも肉体に比べれば心はもろいものだ。 今パリ大会では、国際オリンピック委員会(IOC)が選手村の一角に「マインドゾーン」と呼ばれるスペースが設けられた。照明を抑えるなどでリラックスできる空間に専門スタッフが常駐し、選手らの心に寄り添う。五輪の歴史で初めての対応だ。 日本オリンピック委員会(JOC)も選手村に「セーフガーディングオフィサー」を常駐させている。メンタルケアをするとともに、悪質な投稿等への削除対応や警察との連携も行うといい、選手の心のケアに体制を整えている。 誰もが思いを書き込めるSNSは、プラスに作用すれば選手へプラスアルファの力をもたらすが、ネガティブなコメントは選手の心を大きく傷つける。本当に応援する気持ちがあるなら、手軽なSNSといえど、そこが実質的に公の場であることをしっかり認識し、一文字一文字に思いを込めながらメッセージを送る。それが、日本サポーターとして最低限のマナーといえるだろう。
弁護士JP編集部