バー経営者が思わず感激したお客さんの神対応「カクテルもいいけど…」の素敵すぎる心遣い
● バーのムードに そぐわない現代の神器 誤解しないでいただきたいが、これだからオジサンは……と苦言を呈したいわけではない。なぜなら、若者にも共通して見られる無作法だって少なくないからだ。 最たるものはスマホとパソコンだろう。居酒屋であれば気に留めないが、ジャズのかかった薄暗いカウンターで突然、「もしもし」と話し始めるのは、完全なるマナー違反。これについては通話禁止の説明書きがあるバーも多いし、店外へ出て話すよう促されるのが普通である。 筆者の店でも、1度、2度まではスルーしたものの、3度目でさすがに「すみません、お席での通話は……」とやったら、2度と来なくなってしまった顔なじみの客がいた。いい年をして注意されたのが気に入らなかったのだろう。ならば、最低限のマナーは覚えておいてほしいのが店側の本音だ。 また、カウンターでパソコンを広げたがる客にも困ってしまう。どれほど仕事が忙しく、急を要するのだとしても、他の客には関係ない。スマホの小さな画面であればさておき、暗い空間で煌々と輝くモニターは無粋でしかなく、雰囲気は台無しだ。 もちろん、バーの側とて何でもかんでもしゃくし定規にやりたいわけではない。気心の知れた常連客に、客がいないタイミングで「ごめん、5分だけパソコン触らせて」と言われれば、気持ちよく「どうぞ」と言える。すべては他の客への配慮なのだから。
● 思わず感激した 「まずスパークリングワインを」 では逆に、店から見ていて気持ちのいい客、好かれる客とはどのような人か? はっきり言ってしまえば、マナーが良くて金払いのいい客に尽きるのだが、それでは身もふたもない。もう少し深掘りするなら、バーテンダーやスタッフに対して大人の気遣いが感じられる客だろう。 以前、深夜にこんなことがあった。初来店の5人グループがテーブル席に座り、「私はイチゴにしようかな」「僕はブドウがいいな」と、それぞれ生フルーツのカクテルを選び始めた。カウンターで背中越しにそのやりとりを聞いていた筆者は、しっかりバーを楽しもうとしてくれているようでうれしくなったものである。 すると、リーダー格らしい1人の男性がおもむろに、「カクテルもいいけど、先に泡(スパークリングワイン)をグラスで1杯ずつ頼もうよ」と言い出した。要は、一気に5種類のカクテルをオーダーすると、バーテンダーの作業が立て込んでしまうので、泡をやってる間に次のカクテルを準備してもらおう、という意図だ。 これはワンオペ店にとっては大変ありがたい心遣いで、実に素敵であった。 また、品のいい客というのは総じて、初見でも会話の切り出しが巧みなもの。着席後、まず目の前のバーテンダーが客との会話を重視するタイプなのか、それとも静かに飲ませるタイプなのかを見極めるように一拍置いて、ごく自然なタイミングで「いいお店ですね」「ここはいつから営業しているんですか」などと、差し障りのない質問を投げかけてくれる。おのずと話がはずむものだから、店を閉めたいまも友達付き合いを続けている人も多い。