女子テニス内島萌夏をカンガルーカップ優勝へと導いた涙の誓い!「奈良さんのように世界で活躍する選手になりたい」 <SMASH>
だがトップ100突破も目前に迫った昨年は、苦しみの1年となる。戦いの場がツアーレベルに上がったことで、対戦相手のレベルも、そしてテニスのセオリーも大きく変わった。以前と同じようにプレーしていても、なかなか勝てない。攻めるべきか、じっくり打ち合うべきか、もっとプレーの幅を増やすべきか……試合のたびに葛藤が生まれ、試行錯誤が続いた。 そんな時にも相談に乗ってくれたのが、奈良だったと内島は言う。 「去年、うまくいかなくて悩んでいた時期も、くるみさんはすごく相談に乗って下さり、モチベーション上げてくださった」 自身も、101位までランキングを上げた後に苦しんだ奈良の経験談は、内島に前を向かせる。望む結果が得られなくとも、悩みや迷いから目を背けず進んできた経験は、今、実を結びつつある。1月にインド開催のITF W50グレード大会を制すると、4月中旬にはスペインでITF W100でも優勝。 「最近サーブが良くなってきて、ポイント獲得率も上がってきました。サーブが良いと全体のリズムが良くなるので、リターンゲームでも良い感じでいけてる気がします」と内島。 さらには、トレーニングの成果にも自信をのぞかせる。 「走れるようになり、ディフェンス面でも自信を持てるようになったので、攻めるだけではなく、ラリーでポイントを作れるようになってきた。自分に余裕があると、リラックスして良いプレーができます」 そのようなベースアップが、今の戦績の背景にあるのだろう。今回のカンガルーカップでは、「追われる立場のプレッシャーもあった」なかでの優勝に、「少し成長できたのかな」と照れたように笑った。 今回、内島の勝ち上がりをコートサイドからつぶさに見てきた奈良は、“妹分”の最大の成長を、精神面に見いだしていた。 「コートに立っている時の萌夏に、オーラがあった。すごく良い姿勢、良い顔で試合をしているなというのが、変わったなと感じたところです。テニスの能力的には、6年前に対戦した時から、人にはないものを持っていると感じていました。今週は苦しい試合も多かった中で、精神面でのタフさが見られたのがうれしいですね」 そう言い懐かしさに頬を緩める奈良は、「あの時に勝っておいて良かった!」と、破顔しカラカラと笑った。 6年前に表彰台で口にした、「奈良さんのような選手になる」の目標に近づいていると感じるか――? その問いに内島は、「まあ、だいぶ遠いですけれどね」と目を細めて、こう続けた。 「先週、今週と追われる立場を経験し、私と対戦した時の奈良さんは、こんな気持ちだったのかなと思いもした。ちょーッと近づけてるかなとは思いますけど……、まだまだですね」 6年前の自分を超え、だからこそリアルな実感を伴い覚える、先達との距離感。 「早く追いつけるように、頑張ります」 あの時と同じ場所に立ち、だが異なるトロフィーと決意を抱え、同じ背を追っていく。 取材・文●内田暁