中国の住宅価格が過去10年で最大の下げ幅 政府の〝歴史的〟救済策も歯止め効かず
中国では新築住宅の価格が過去約10年で最も大幅な下げ幅を記録。政府による不動産セクターへの6.5兆円という“歴史的規模”の救済策も不動産下落に歯止めが効かず、まだ底を打つ気配は見えてこない。 中国国家統計局が17日に発表した5月の主要統計によると、1 ~5月の不動産開発投資は前年同期比10.1%減だった。このデータに基づくロイター通信の集計によると、5月の住宅価格は前月比マイナス0.7%で、前月比で11か月連続の下落となり、2014年10月以来最大の下げ幅となった。 年間ベースで見ると、新築住宅価格は前年比3.9%下落し、4月の同比3.1%下落からさらに加速した。 一方、米CNNは、オーストラリアの投資銀行、マッコーリー銀行による5月の統計として、中国の主要70都市を対象とした既存住宅価格が前年同月比7.5%下落し、過去最大の下げ幅を記録したと伝えた。 「新たな政策により、主要都市の中古住宅市場は活性化したものの、不動産業界の流動性問題はまだ緩和されておらず、新築住宅市場の信用問題もまだ解決されていない」と英経済誌「エコノミスト」の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのアナリストはロイター通信にそう解説した。 かつては中国の経済成長の重要な原動力だった不動産セクターは2021年半ば以降、開発業者の債務不履行や、青田売りマンションの建設が頓挫するなど危機的状況に直面している。 そんな不動産セクターを支えるため、政府は5月、膨大な数の売れ残り住宅の処分や開発業者の支払い負担軽減、販売促進のため住宅ローンの条件緩和など、〝歴史的規模〟の3000億元(約6兆5270億円)を投じている。 だが、仏メガバンク、ソシエテ・ジェネラルのアナリストは、「住宅救済策の効果が現れるにはひと月は短すぎる」と指摘。国有企業が経営難に陥った開発業者から売れ残った住宅を買い取るための低利融資を提供する取り組みなど、こういった対策が不動産市場に影響を及ぼすには「まだ時間がかかる」と分析した。 そうだとしても、中国の不動産セクターが示す数字は深刻だ。 国家統計局によると、1~5月の不動産販売(床面積ベース)は前年比20.3%減となり、新規不動産販売は同比28 %減少。新規着工(床面積ベース)は前年比24.2%減り、不動産開発業者が同期間に調達した資金は同比24.3%減少した。 そんな中、国家統計局が発表したいくつかの別の指標は、中国経済の楽観的な側面を示している。 小売売上高は5月、前年比3.7%増加し、4月の2.3%増から加速。市場予想を上回った。この増加の多くは、国内消費の強化を目的とした中古車や売れ残り家電製品の大規模な政府下取りプログラムによるものだという。5月上旬のゴールデンウィーク期間の消費者支出も活性化に貢献したとみられる。 また、6月初めに発表された税関データによると、中国の輸出は5月に7.6%増加し、2023年4月以来最高となった。ただ、輸入は予想を下回った。また、工業生産は勢いを失い、5月は前年比5.6%増で、4月の6.7%増からスローダウン。固定資産投資も予想より低かった。 マッコーリー銀行のアナリストは、「成長は非常に不均一」と指摘し、現在は輸出が牽引役で、不動産セクターは依然足かせになっているとCNNに語った。 デフレの脅威も存在する。国家統計局の先日の統計によると、消費者物価指数は5月にわずか0.3%上昇し、4月から変化はなかった。また、生産者物価は1.4%下落し、20か月連続で下がった。 世界最大級のメガバンクHSBCのアナリストらはCNNに、「中国の成長は依然として不均一だが、今年のGDP成長目標(約5%)を軌道に乗せるため、さらなる政策支援が実施される」と予測。7月に開催される「第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)」では、今後数年間の経済改革にどのような指針が打ち出されるのか、注目されると述べた。
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