「記者に張り込みされるから公開できない」抜け穴だらけの政策活動費、維新が領収書黒塗りを主張した驚きの理由
なぜ「10年後」なのか
「抜け穴だらけ」という批判の最たるものは「なぜ公開が10年後なのか」ということに説得力のある説明が全くなされていないからだ。 離合集散を繰り返す政界にあって、10年後には今の政党が存在しているかどうかもわからない。10年前にあった民主党、維新の党、生活の党、次世代の党などは、今はもう存在しない。 事実、維新の馬場代表も「10年という数字に何か完全な根拠があるわけではありません」と語っている。 岸田総理は「10年後に公開しなかった場合の罰則については今後検討していく」と述べるにとどまっている。つまり、現状は10年後にどのように公開するのか、また公開しなかった場合の罰則があるのかも決まっていないのである。 国民民主党の玉木代表は次のように指摘する。 「政治資金規正法の不記載の罪、あるいは所得税法の納税の義務の違反、こういったものは全部公訴時効が5年です。10年後に罰則に問うことはできない。だから10年にしたのではないか」
政治改革の熱意なき空疎な国会審議
この法案では政策活動費については、「政治活動に関連してした支出」についての領収書や明細を公開していこうという方向性が決まったというのにすぎない。 問題はこれだけではない。まず、水道光熱費や人件費についても明細を明かす必要がない。また、「払い切り」の問題もある。100万円受け取っても政治活動に50万円しか使わなかった場合、50万円分の領収書を公開しても残る50万円を返還するわけでもない。その場合、本来であれば雑所得として確定申告する必要があるが、その時効はすぎているため逃げ得となる。 さらに、他の条文では「政治活動(選挙運動を除く)」としている箇所がある一方、政策活動費についての条文では「政治活動」とだけにしているのは、自民党が政策活動費を選挙活動費として配布したいからではないかという指摘もなされている。選挙運動への支出は詳細が明かされないのであれば、まさにブラックボックスそのものである。 政治資金改革の大きな論点であったはずの政策活動費はこのように「穴だらけ」の状況を是認する形となった。しかし、この点を厳しく追及していた公明党は自民党と歩調を合わせて賛成し、同じく賛成した維新は「維新案を自民党が丸呑みして政策が進んだ」と強弁する。 さらに野党第一党の立憲民主党はパーティー禁止法案を出したものの、幹部がパーティー開催を計画していたことが明るみとなり永田町を唖然とさせた。結果、立憲のパーティー禁止法案については他のどの党からも賛成を得られなかった。 今回の法案は自民党の裏金問題に端を発して議論が始まった。裏金問題に国民が怒っているのは、政治家があまりにもいいかげんに政治資金を扱っているのではないかという不信感を抱いているからだろう。 政治資金の不記載は違法であるにもかかわらず、何十人もの議員が多額の不記載をしていたのだ。いくら法律を変えたところで、そのルールを守らないのであれば意味がない。それに対して行われたはずの法改正の議論で、各党の姿勢はその不信感を払拭するには程遠いものであったと言わざるを得ない。 参議院へと移った法案審議を注視したい。
小川 匡則(週刊現代記者)