【中山記念回顧】本格化迎えたマテンロウスカイ 名手・横山典弘騎手に導かれ惜敗続きにピリオド
中山記念を読み切れる横山典弘騎手
春への移ろいに抵抗するかのように寒波が襲来し、春を告げる前線が列島の南に横たわった週末、中山はその影響から肌寒く冷たい雨に見舞われた。開幕週の道悪は内側が優位で時計を要するという難しい状況になる。逃げ馬テーオーシリウスが外枠に入り、ハナを奪えない展開は予想外といえば予想外だった。 【中山記念2024 データ分析】3枠より内が特定条件クリアで単勝回収率241%! 脚質別成績などデータで徹底分析(SPAIA) 細かい部分は違っていても、レースの展開を読み切っていたのがマテンロウスカイに騎乗した横山典弘騎手だ。中山記念は最多6勝目。金曜日に56歳になったばかりのベテランは中山芝1800mを熟知している。道悪でも開幕週ならインの先行が定石。逃げ差し自在のマテンロウスカイは全16戦のうち15戦の手綱をとった気ごころ知れた相棒で、意図をくんだレースプランを実現できる。 典弘騎手の中山記念の成績【6-5-1-12】のうち、1~4枠【6-1-1-4】、5~8枠【0-4-0-8】と距離ロスを軽減し、立ち回りの巧さで乗り切る内枠でこそ輝く。マテンロウスカイもまさにその通りの競馬で、先手をとったドーブネについていき、4コーナー出口でその外へ持ち出し、あとは前をとらえるだけといった内容だった。たとえ上がりがかかったとしても、開幕週なら残れる。この馬場なら後ろは切れる脚を使えない。そんな確信すらあったはずだ。マテンロウスカイの自在な立ち回りは、レースごとに馬のリズムを優先させた結果だ。無理に形にはめ込むことはない。
惜敗にピリオドは本格化の合図
馬の意志を尊重しながら、少しだけ勝つための手順を示唆する。典弘騎手や武豊騎手はそんな競馬で勝利をつかむ。優秀なアドバイザーであり、コーチでもある。きっと、マテンロウスカイも気分がよかったにちがいない。これで1800mは【3-2-2-1】、逃げて1:44.7を記録したこともあり、得意距離といっていい。オープン昇級後は昨年末まで4番人気以下なしの、常に上位人気に推され、崩れたのは阪神芝2000mのケフェウスSのみと堅実に走ってきた。年明けは東京新聞杯6番人気5着、そして今回7番人気1着と人気を落としていた。堅実だけど一歩足りないというファンの見切りが早すぎた。 次走は大阪杯に進むのか。オープン昇級後、唯一の大敗だったケフェウスSは暴走気味に逃げて失速しているだけに、気になるところだが、その後のレースぶりから一過性のもののようだ。セン馬で、気性に危うい面がないとはいえないが、5歳になってその辺も抜けつつある。展開に左右されない自在型だけに混戦向きで楽しみだ。モーリス産駒といえば、昨年の大阪杯を勝ったジャックドールも切れ味で劣る難しい馬だが、武豊騎手のサポートでGⅠに手が届いた。マテンロウスカイと同じ5歳春で、モーリス産駒の本格化するタイミングも一致する。 母系にはスペシャルウィークとトニービンの血が入っており、5歳本格化をあと押しする。惜敗続きの馬がひとつパフォーマンスを上げたときは、逆らわずについていく。これも競馬の鉄則のようなものだ。