圧政下で指名手配され、潜伏生活を続けるミャンマー人監督によるセルフドキュメンタリー 映画『夜明けへの道』
軍事クーデター以降圧政がつづくミャンマーで指名手配となり、潜伏生活をしながら闘い続けるミャンマー人監督コ・パウが、自らを撮影したドキュメンタリー映画『夜明けへの道』。この度、本作の日本公開が決定し、あわせて予告映像が公開された。 映画監督であり、ミャンマーでは芸能人としても有名なコ・パウ。本作はそんな彼が「自分のような立場の者こそ先頭に立って戦わなければならない」という思いで、民主化を目指して闘い続ける様子を自ら撮影したビデオ日記的な作品。 かつてビルマと呼ばれたミャンマーでは、半世紀にわたる軍事政権が終わりを迎えた2011年以降、言論の自由が拡大した。コ・パウは自由な時代の映画製作に勤しむ一方、COVID-19により外出が困難になると、家族で製作したコメディ動画をSNSへ投稿。総フォロワー数は100万人を越え、厳しいロックダウンに苦しむ市民を元気づけた。 そんな折、2021年2月1日早朝に軍事クーデターが勃発、一夜にして世界は転覆した。軍は前年の総選挙での不正を口実に、アウンサンスーチー国家顧問ら民主派政権の幹部を拘束、非常事態を宣言して全権を掌握。コ・パウら芸能人は街に出て抗議デモを先導したことで指名手配される。 国軍の残虐行為は次第にエスカレートしていき、デモ隊を機関銃で一掃するなど容赦ない弾圧に乗り出す。国軍から追われる身となったコ・パウは、民主派勢力の支配地域に逃亡し、ジャングルでの潜伏中に短編映画『歩まなかった道』を製作。そして現在も潜伏生活を続ける中で、自らのリアルな姿を撮影したセルフドキュメンタリーである本作『夜明けへの道』を製作した。 軍に都合が悪い情報を発信するものはすべて処罰の対象となるため、国内外に情勢を伝えることは困難な状況だが、コ・パウは、ミャンマーに目を向けてほしい、そして民主化の時計の針を巻き戻すまいと今なお闘い続けている。 映画『夜明けへの道』は、2024年4月27日(土)より全国順次公開。
otocoto編集部
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