猛暑の中の夏休み(8月11日)
異常なまでの猛暑が続く今年の夏も、暦の上では立秋を迎えた。 はるか昭和の時代、お盆をすぎる頃には朝晩の空気は、どことなくすっきりと涼やかになっていた記憶があるが、ここ数年はそのようなことは望むべくもなく、地球規模の異常な気候変動をいやが上にも実感する。 子供たちにとってもこの猛暑は、「夏休みの過ごし方」を大きく変えてしまっているらしい。 “暑さ指数”の数値が33になると「熱中症警戒アラート」が発表されて、「運動は原則中止」となる。戸外へ遊びに出ようにも、部活に参加するにも「アラート」が発令されればままならなくなる。「早朝部活」に切り替えたり、「なるべく温度管理をした室内、施設内にいるように」ということで、自然と昼間は自宅にいることも多くなる。確かに戸外にいることは危険なので仕方ないが、せっかくの夏休みだというのに、小中学生たちが家の中の涼しいところで、体力を持て余しながら時間を過ごすことになる。
そもそもこの数年、コロナの緊急事態宣言以来、自宅にいることに、子供たちもすっかり慣らされてしまった。 あるアンケートによると、中学生の約60%は夏休みに何をするかの具体的な計画はなく、40%の学生は可能であれば部活をしたり塾に行くが、その上で80%が「自宅が好き」、70%が「家でゴロゴロが好き」らしい。そしてやはり、「趣味」の1位は「ゲーム」で、上位に音楽鑑賞、映画鑑賞、読書、インターネットなど、インドアの過ごし方がずらりと並んでいる。 猛暑だから仕方ないとはいえ、「夏休み」ならではの貴重な体験のチャンスや、少しだけ背伸びをして何かに挑戦する“自由な時間”が損なわれてしまっているのではないだろうかと、お節介ながら心配になる。真っ黒に日焼けした子供たちが元気に走り回る光景が懐かしくさえ思える。 感受性豊かなこの時期にこそ、たくさんの人と会い、初めての場所に出かけたり、学校生活以外の交友を深めたり、普段はなかなか触れることのできなかった自然や文化や芸術やエンタテイメントに出会うことこそが、夏休みの醍醐味だ。その経験こそが、豊かな情操、考える力や作り出す力、体力と共に精神力も養ってくれる。2学期の始業式に久しぶりに会う友達の顔が、どこかたくましく、大人びて見えるのはそのせいなのだ。
夏休みは、人生で咲かせる花の種をたくさん集める貯蔵庫のようなものだ。 異常猛暑がおさまらない限り、「熱中症警戒アラート」と上手に付き合っていくしかない。ただ受け身でおとなしく自宅にこもってばかりいては、貴重な時間がもったいない。親も子も協力しあって、今こそ知恵を使って、貴重な「夏休み」を謳歌すべきだと思う。もうすぐ2学期がはじまる。充実した秋のためにも、蓄えとなる夏休みを、どうか送ってほしいと願っている。 (宮田慶子 白河文化交流館コミネス館長)