廃虚を甦らせた「海に眠るダイヤモンド」 イマドキTV+
長崎県の端島(はしま)(軍艦島)へ上陸取材したことがある。数時間かけて島内を巡った。廃虚と化した空間で、かすかな生活の名残を頼りに、繁栄期の姿を思い浮かべようとした。 今期の日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)に、空撮された端島が、時を遡るようににぎやかさを取り戻していくシーンがあった。荒れ果てた無人島に明かりがともり、煙突から煙が出て…表現として珍しいものではないけど、個人的には、これが見たかった!というドンピシャの映像で、つい拍手。 物語は、石炭産業で栄えていた昭和期の端島(その再現度だけでも一見の価値あり)と、現代の東京を舞台にして進む。主人公を演じるのは神木隆之介さんで、過去と現代の両方に登場。端島の炭鉱に勤める鉄平は明るくて実直な好青年、東京の玲央はやさぐれたホスト、という対照的な2役を演じ分けている。 島の出身者で、会社経営者のいづみ(宮本信子さん)が、新宿で玲央に「結婚しよう」と声をかけることから物語がスタート。回想っぽく過去が語られるものの、いづみという人物は出てこない。鉄平の日記を持つ彼女は誰なのかが気になって気になって(第5話でついに判明)。最初は鉄平=玲央も他人の空似だと思っていたけど、もしかして何か関係があるかも、なんて話も出てくるし。牽引(けんいん)力抜群の構成だ。 東京編もコミカルで悪くないんだけど、端島を舞台につづられるヒューマンドラマがめちゃ好み。家族の衝突やら、幼なじみの友情物語やら、定番といえば定番であるものの、キャラと語り口がいい。 ダブルヒロインの朝子(杉咲花さん)と百合子(土屋太鳳さん)のかみ合わなさは、ちょっとした恋のもつれと思っていたら、切なすぎる過去が判明。笑顔を見せられて涙が止まらなくなるなんてね。 離島で単一産業という特殊な社会構造や格差、戦争の傷痕など、硬派な要素もちりばめられて、見応え抜群の大作にして傑作。閉山を知っているから、そのはかなさにも心揺れる。(ライター 篠原知存)
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