「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解、新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける
歳をとると誰でも物忘れをしやすくなります。ですが、シニアになってしまうと、知的能力が低下するかというと、決してそんなことはありません。 経済学者として日本経済を観測し続け、大ベストセラー『「超」勉強法』をはじめ、独自の勉強法を編み出してきた経済学の大家、野口悠紀雄氏が、「人生100年時代の勉強法」を伝授した『83歳、いま何より勉強が楽しい』より一部抜粋、再構成してお届けします。 【この記事の他の画像を見る】 ■物忘れは、知的能力の低下のためか?
「シニアになっても勉強を続けよう」という意見に対して、高齢者になると、知的能力が低下してしまうのではないかという意見が提起されるでしょう。「勉強を続けたいのは山々だけれども、記憶力が落ちてしまうので難しい」という考えです。だから、「高齢者に勉強は無理だ」と言う人もいます。 実際、私自身が、忘れることが多くなったと感じることがあります。とくに、人の名前です。コロナ禍で会合が少なくなったこともあり、しばらくの間会わなかった人たちの名前を忘れていることに、ふと気がつきます。これで大丈夫だろうか? と、不安に思うことも少なくありません。
では、物忘れをするようになると、勉強はできないでしょうか? 実は最近のさまざまな研究は、これとは違う結論を出しています。これは大変励みになることです。 神経可塑性:勉強によって脳の細胞構造が変わる アメリカの有名なサイエンス・ライターであるハンク・グリーン氏は、高齢者の知的能力に関して、非常に興味深い意見を述べています(ハンク・グリーン「大人になっても脳は成長する! 勉強しているときに頭の中で起こっていること」ログミーBiz、2016年7月13日)。
この考えを以下に紹介しましょう。 20年前には、大人になったら、脳がほぼ固定されてしまうものだと考えられていました。だから、勉強することはできるけれども、それによって脳が発達するというようなことは起こらないと、考えられていたのです。 一定の年齢後の脳の役割は、内臓を動かしたり、日常生活で必要な動作をすることなどに限られる、と考えられていました。 しかし、その後、脳機能イメージング技術が進歩し、脳の働きを示す鮮明な画像を撮ることができるようになりました。そして、多くの新しい事実が発見されたのです。