堂安や久保といったヨーロッパでプレーする精鋭たちを揃えた日本。しかし、イラン戦では彼らは存在感を発揮できなかった。(C)Getty Images

　日本には何が足りなかったのか。「大波乱だ」と言われたイラン戦から約1日が経過し、サッカー界隈の人々は考え続けている。 【動画】痛恨だった後半ATのPK献上 板倉が与えた絶好機を決めたイランの決勝弾 　2月3日にカタールで開催されたアジアカップの準々決勝で日本代表はイラン代表と対戦。28分に守田英正のゴールで先制しながらも、インテンシティーがガクッと落ちた後半は55分に同点弾を献上。そして、後半アディショナルタイムに板倉滉が与えたPKを決められ、1-2で敗れた。史上5度目の大会制覇を目指した精鋭たちはベスト8で散った。 　下馬評は高かった。メンバーの大半をいわゆる欧州組が占め、「史上最強」と謳われた。シンプルなタレント力だけで言えば、今大会に出場していたチームの中では群を抜いていた。これは間違いなくそうだ。 　それでも彼らは敗れた。要因は何か。イラン戦後のフラッシュインタビューで「私自身が交代カードをうまく切れなかった」と語った森保一監督の戦略、あるいは試合を読む力か。それとも日本サッカー界の永遠のテーマと言われる得点力不足、多少のラフさも厭わない相手に対する肉弾戦での弱さか。タレント軍団に足りないものが多かった。 　力不足を露呈した試合について意見を求められた選手からは、自分たちの課題を強く主張する声も聞こえた。『DAZN』のフラッシュインタビューに応じたDFの冨安健洋は試合後に「ピッチ上での振る舞いも含めて、もっともっとやらないといけないですし、戦わないといけない。そこの熱量はちょっと、今日の試合の後半は特に感じることはできなかった」と発言。戦術面よりもメンタル面での問題点を口にした。 　アーセナルという超名門でプレーする日本人が語った課題を、イラン戦前に示した他国の選手がいた。それはベスト4に勝ち進んだ韓国代表FWソン・フンミンである。 　今大会の韓国は日本と同様、いやもしかするとそれ以上に苦しい戦いを続けてきた。ベスト16ではサウジアラビアを延長戦の末に撃破。続くベスト8でもオーストラリアを120分の死闘を繰り広げ、紙一重の戦いを勝ち上がってきた。 　その苦境を打破するように奮起する姿を見せてきたのが、ソン・フンミンだった。とりわけオーストラリア戦は圧巻で、後半アディショナルタイムに自らのドリブル突破で同点となるPKをもぎ取ると、延長前半104分には鮮やかなFKで決勝点を決めた。韓国イレブンは誰もが「ソン・フンミンが諦めなければやれる」と彼を心の拠り所にしていたように見えた。巨漢なマーカーたちを最後は気力で押し切ったソン・フンミン。そこに世界屈指のタレントの矜持を見た。 　オーストラリア戦直後のピッチ上で、精魂尽き果てたかのように膝をつき、歓喜しながらむせび泣いたソン・フンミンは「120分間プレーするのは苦痛だし、簡単じゃない。でも、精神力で乗り越えることはできる。僕らは母国のためにプレーしている。疲れは言い訳にならない」と言い放った。「アジアサッカー史上最高」と称される偉才が、驕ることなく、ここまで圧倒的な熱量を持って臨んでいる。これこそ冨安の言う日本に欠如していたものではないか。