スーパーで売場が拡大している冷食業界に投資するならドコがいい?【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている! 1985年に現在の社名に変更しているが、その前は日本冷蔵株式会社という社名だった。その前身は帝国水産統制株式会社である 今週の研究対象 冷凍食品(ニチレイ) スーパーを歩いていて、冷食の売り場が拡大していることに気づいた方もいるのではないだろうか。コロナ禍から冷食ブームといわれて久しい。将来有望な上場企業はある? 助手 所長、最寄りのスーパーが大改装したの知ってますか? フロアの半分近くが、お惣菜と冷凍食品のコーナーになったんです。特に冷食は倍以上の規模に。大胆ですよね。 坂本 惣菜も冷食も市場が拡大してるからね。コロナ禍で外食できなくなって中食ニーズが発生し、お惣菜や冷凍食品を食べるユーザーの裾野が広がったのがひとつの要因です。そして、コロナ明けで出社回帰の流れになって、今度は時短目的での需要が復活した。 助手 なるほど。 坂本 特に冷食はコロナの前後で商品開発が進んで種類が豊富になったし、味も格段に良くなった。コロナ禍の外出自粛期間に冷食のおいしさに気づいてリピーターになった人も多いんじゃないかな。 助手 確かに、最近、冷食の種類が増えた気がします。改装した売り場には、おかずと主食がセットされた商品が並んでました。例えば「ハンバーグとナポリタン」とか。1セット当たり300円台から有名シェフ監修の1000円台半ばのものまで。1食が済ませられて便利だと思う半面、冷食も高くなったと驚きました。 坂本 そう。味の向上とユーザーの広がりで、高付加価値・高単価の冷食も受け入れられるようになったんです。高単価が許されるおかげで、メーカーは利益幅を取りやすいし、原材料にコストをかけておいしさを追求することもできる。冷食業界には追い風が吹いてると思うよ。 助手 なら、投資先として検討したいんですが、どこがいいですかね? 坂本 冷食業界を検討するなら「本格炒め炒飯」のニチレイフーズを子会社に持つニチレイだよ。 助手 確かにおいしいですけど、豪華なワンプレート冷食からは落差がありません? 坂本 実は、チャーハンは冷食の中でも有望分野なんです。調査によると、チャーハンを食べる機会のうち、冷食の割合は現状16%程度なんですが、それが今後数年で30%まで上昇すると予測されています。ちなみに、唐揚げやギョーザはすでに20~30%に達していますね。 助手 他の食品に比べて伸びしろがあるってことですか。 坂本 そのとおり。冷凍チャーハンのシェアはニチレイが5割弱を握って独走状態だから、市場拡大の追い風を存分に受けられるはずです。 助手 でも、増産に向けて工場を増やす必要が出てきたりして、一時的に利益が減ったりするんじゃ? 坂本 鋭いね。でも同社はすでにチャーハンの新工場が稼働していて、今は投資回収期に差しかかっているから心配はありません。冷食の第2の柱「唐揚げ」も工場の生産能力を増強済みで隙がない。 助手 もう利益を刈り取るだけなのか。オススメの理由がわかりました。 坂本 それだけじゃない。ニチレイは冷食業界全体で見ても首位。ブランドの知名度があるし、宣伝にも存分にお金をかけられるのも強い。そして何より、小売業からの値下げ圧力に対抗しやすい。 助手 どういうことですか? 坂本 小売業は冷食を特売の目玉商品にしたいんです。買いだめする客を集めやすいから。つまり冷食メーカーには小売店から圧力がかかりやすい。この点、ニチレイは強い商品があるから大手小売店との交渉も有利。加えて、積極的に値上げに動いています。今期はすでに第1四半期で上方修正するほど好調。長い目で投資するといいでしょう。 今週の実験結果 小売店に対して交渉力がある業界のトップランナーというポジショニングが強いですね! 構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗