今後クマが出ても猟師は“駆除拒否”できる…老ハンター怒りのワケ「我々はクマの駆除をしたくないと言ってるんじゃない」
第二審では逆転敗訴
そして2024年10月18日、札幌高裁は一審の判決を覆し、池上は逆転敗訴を喫した。 この二審では、現場の斜面を「バックストップ」とは認めず、池上の撃った弾が跳弾して斜面の上の建物に到達するおそれがあったと指摘した。判決文にはこうある。
〈本件発射行為当時、本件ヒグマがいた位置と本件一般住宅との間には、仮に何らかの物が存在していたとしても、土手などの弾丸を遮るに足りる構造物は存在しなかった〉 〈仮に何らかの物が存在していたとしても〉とは8mの斜面のことを指すのだろうか。山岸もこう首をひねる。 「今回、この判決を出した裁判官は現場検証をしていません。なのになぜ、斜面がバックストップにならないと判断できるのか、私には疑問です。確かに鳥獣保護管理法には“バックストップがない場所で撃ってはいけない”と書いてあるんですが、では幅何mで高さが何mあれば、バックストップと認められるのかという具体的な規定はないんです」 一方で判決文の中で裁判官がしきりに強調しているのが跳弾の可能性だ。 〈(現場斜面には草木が繁茂し、石も散乱していたため)跳弾が起こりやすい状況であったことを考慮すると、本件発射行為による弾丸は、本件ヒグマに命中したとしても、その後弾道が変化するなどして、本件周辺建物5軒、特に本件建物や本件一般住宅に到達するおそれがあったものと認めるのが相当である〉 〈なお、(各文献によると)跳弾は、飛んでいく方向が分からず、複数回起こり得ることからすれば、本件ヒグマがいた位置と本件周辺建物5軒の間に本件斜面の地面があったとしても、直ちに本件周辺建物5軒に跳弾が到達するおそれがなくなるともいえない〉 要は、跳弾というのはどこに飛んで行くかわからないのだから、撃った弾丸がヒグマを貫通し、8mの斜面を超えて、さらに60m離れた建物群に到達することだってありうるという理屈である。あえて言うならば「跳弾万能説」だ。 そもそも跳弾したのであれば、現場に弾丸の破片などが残るはずだが、それは見つかっていない。