『からかい上手の高木さん』実写化で原作者が唯一「やめてほしい」と言ったこと 今泉力哉監督が大切に描く
――高木さんと西片は恋人にもなっていませんし、西片にいたっては「好き」の感情そのものがまだ分かっていない状態のまま10年経っています。監督にとっても新鮮で面白いと感じる関係でしたか? 中学生からの10年後を描くとなったときに、通常だとその間に他の誰かと恋愛しているなど、物語に新たな第三者を置きがちです。でもこの作品では3人目を置くのはやめようという話になりました。原作者(山本崇一朗氏)や出版社サイドも唯一「それはやめてほしい」と言っていましたし、自分でもこの原作で第三者を置くということに興味はなかった。原作ファンも「この2人のどちらかが、他の人を好きになる可能性ってある?」と考えると思ったし。その条件下で、どう2人の気持ちが変わっていくのかを考えていきました。
“第三者を置かない”という、ベタな作劇にならないこの設定を、僕自身が楽しんでできたところはありますね。あと「好きな気持ちや恋愛が分からない」といった人物像については今まで何度も扱ってきたテーマですし、他の人を好きにならずに10年間一途でいるという関係も、この原作と島の空気ならそれほどファンタジーにならない気がして。現実世界にも全然いますからね、そういう純粋で一途な人は。 ■今泉力哉監督 1981年2月1日生まれ、福島県出身。2010年『たまの映画』で長編映画監督デビュー。13年『サッドティー』が第26回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に出品される。19年『愛がなんだ』がロングランヒットとなり一躍人気監督に。新時代の恋愛映画の名手として支持される。近年の主な監督作に『あの頃。』『街の上で』(21年)、『窓辺にて』(22年)、『ちひろさん』『アンダーカレント』(23年)など。人気コミックを実写化した『からかい上手の高木さん』では、原作と同じ中学生時代の物語を監督したドラマ版が放送され、続けて主演・永野芽郁、共演・高橋文哉により10年後の物語が展開する映画版が公開中。 ■ 望月ふみ 70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビュー取材が中心で月に20本ほど担当。もちろんコラム系も書きます。愛猫との時間が癒しで、家全体の猫部屋化が加速中。 (C)2024映画『からかい上手の高木さん』製作委員会 (C)山本崇一朗/小学館
望月ふみ