『虎に翼』寅子にはどんな恋が訪れる? “初恋は実りづらい”朝ドラの傾向を振り返る
NHK連続テレビ小説『虎に翼』第4週、明律大学女子部を卒業した寅子(伊藤沙莉)は晴れて明律大学法学部へと進学した。学びの場が男女共学になり、寅子をはじめとする女子部出身者たちは、一気に男子学生との交流が増えた。 【写真】シャラ~ンという効果音とともに登場した花岡悟(岩田剛典) 「初手が肝心」と勇んで行った最初の授業では、花岡(岩田剛典)の紳士的な振る舞いにより、男性たちからひどいことなどを言われずにすんだ。これまで寅子たちが出会ってきた男は、轟(戸塚純貴)のように「男性の方が偉い」というようなことを言いたがっていた。だが、どうやら法学部はそんな人たちの方が少数派のよう。そのことに寅子たちはほっと胸を撫で下ろしていた。 でもどんな人にも、意外な一面はあるもの。花岡の一声で企画されたピクニックで、多くのことが明らかになった。たとえば、みなが好青年だと思っていた花岡は、おそらく無意識に女性を見下してしまう傲慢さを持っていたし、轟はその発言から悪目立ちしてしまうが、根は優しくいい人だった。どうやら法学部の面々は、まだお互いに「男性だから」「女性だから」という概念に囚われて、ぶつかってしまうことの方が多いようだ。彼らにキュンとするような恋が訪れるのはもう少し先かもしれない。 近年の朝ドラでも、数多くの「初恋」が描かれてきた。特にひとつのことに一生懸命になる朝ドラヒロインたちの初恋はとても甘酸っぱい。『ブギウギ』(2023度年後期)のヒロイン・スズ子(趣里)は梅丸楽劇団(UGD)の旗揚げのため、一緒に大阪から上京した秋山(伊原六花)がダンサー仲間の1人に恋をしたことをきっかけに、自身も恋愛を意識し始める。そして演出家の松永(新納慎也)にほのかな恋心を抱いたのだった。しかし、松永にはアメリカに残してきた恋人がおり、あえなく散ってしまう。 朝ドラヒロインの恋模様は多種多様だが、共通してるのは、相手から思いを打ち明けられ、意識するというよりは、自分から恋に落ちていくこと。そして初恋は実りづらいものだ。 『スカーレット』(2019度年後期)のヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)は働きはじめた下宿屋「荒木荘」の住人である医学生・圭介(溝端淳平)を兄のように慕っていた。ひょんなことから圭介の恋を応援することになった喜美子だが、その心に経験したことのない痛みが走るような感覚があり、なぜか落ち込んでしまう。喜美子は、姉のような存在の女性新聞記者・ちや子(水野美紀)の助けもあり、自分が圭介に対して恋をしていることにやっと気づくのだった。結局、圭介の恋の方が成就し、喜美子のときめきは一瞬で終わってしまう。 『おちょやん』(2020度年後期)のヒロイン・千代(杉咲花)は、撮影所の大部屋女優となった頃、撮影所の助監督として走り回りながら、いつか監督をしたいと願っている青年・真治(若葉竜也)に恋をした。同じ時期に千代は、撮影所の看板女優になっており、大ファンであった百合子(井川遥)とも交流を深めるように。そんな中、千代は真治が百合子に片思いしていると知り失恋してしまう。それを知らない百合子は、千代の脇役起用に一肌脱いでくれ、千代に与えられたのは夫を取られた若妻の役。千代は失恋の思いを投影してその脇役を演じ、監督らから称賛されたのだった。三角関係がまわりまわって仕事の評価に昇華したのである。 果たして寅子にはどんな初恋が待っているのだろう。ピクニックの前に香淑(ハ・ヨンス)と破廉恥な“男の井戸端会議”を見てしまったせいか、交流を深めるはずのイベントで寅子はより男性陣と距離を取るようになってしまった。寅子のせいではないが、最後には議論が白熱しすぎて花岡が怪我をしてしまう事態に。まだまだ「花より団子」ならぬ、「恋より法律」の寅子。今後、彼女にどんな心の変化が訪れるかに注目していきたい。
久保田ひかる