「希望を見出して生きた人がいることを伝えたい」父親の"シベリア抑留体験"が一冊に 絵本の挿絵を高校生が担当=静岡県
静岡放送
戦後、旧ソ連軍によって57万人以上の日本人が連行され、強制労働を強いられた「シベリア抑留」。静岡市の女性がつづった抑留者の父親の体験が絵本として出版されました。物語の挿絵を描いたのは高校生です。 【写真を見る】「希望を見出して生きた人がいることを伝えたい」父親の"シベリア抑留体験"が一冊に 絵本の挿絵を高校生が担当=静岡県 「戦争中だぞ!兵隊さんがお国のために戦っているというのに、そんなもので遊んでいるとは、お前は非国民だ!」 12月3日、静岡市清水区で行われたチャリティーコンサートで演奏とともに披露されたのは、ある絵本の朗読です。 「完成したバイオリンを収容所のみんなに聞いてもらう。みんなに大きな勇気と喜びを与えました」 物語の作者は、静岡市に住むピアノ講師の窪田由佳子さんです。窪田さんは、シベリアに抑留された父親の経験を本に記しました。57万人の日本兵らが、旧ソ連軍によって強制労働を強いられた「シベリア抑留」。約6万人が命を落としました。 窪田さんの父・一郎さんは17歳で満州に渡ったのち、戦後3年間、シベリアで抑留生活を送りました。 <窪田由佳子さん> 「お邪魔します。こんにちは」 父親の体験を幅広い世代に知ってほしいと、絵本として出版し、清水南高校の多田つむぎさんが挿絵を担当することになりました。劣悪な環境の中で働かされながらも、一郎さんは希望を捨てず、廃材でこっそりと大好きなバイオリンをつくり、やがて楽団が生まれました。 <清水南高校 多田つむぎさん> 「物語に馬のしっぽから弓の毛を取るというシーンがあって、そこを入れるのは重要なことだったのかな」 美術部の仲間とともに16枚の挿絵を完成させ、2024年8月、影絵の撮影会が行われました。プロジェクトが始まって、約1年…。 「おつかれさまでした」 ようやく絵本が完成し、11月29日、多田さんたちに一足早く贈られました。 <生徒> 「すご~い!」 <作者 窪田由佳子さん> 「ここすごく大変だったでしょ、切るの」 <清水南高校 多田つむぎさん> 「本番撮るときが一番忙しかったですよね、アクリル板に挟んで」 細部まで妥協せず作り上げた影絵は、シベリア抑留の厳しい現実と希望を捨てずに生き抜いた一郎さんの思いが表現されています。 <清水南高校 多田つむぎさん> 「戦争の辛さとか抑留の苦しさを伝えることは、私が経験を実際にしていないのでわからないという思いから影絵の表現になった。このシルエットからさまざまなことを子どもたちにも想像してもらいたいなと思いました」 <作者 窪田由佳子さん> 「体験した人が語ることができなくなる現実が目の前に迫っていて、シベリアのことを忘れ去られないように伝えたいというのが大きいんですけど。希望を見出して生きた人がいるということを伝えたいというのが一番ですね」
平和な世界への祈りを込めた絵本は、全国の書店に並びます。
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