インドとの政治・経済連携強化の重要性
居心地の良い「中立」の旗
中立というよりは一歩踏み込んで、両陣営それぞれから便益を積極的に獲得しようとしているようにも見える。もちろん、インドの中露との付き合い方も等距離ではない。伝統的に、ロシアからは兵器を購入している。中国とは国境線の画定ができていないので、しばしば軍事衝突が起こっている。インドは、中国が主導するBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の中核メンバーであるが、BRICSは参加国を増やして反西側陣営の経済グループとして成長しようとしている。 インドは、西側陣営によるロシアへの経済制裁の結果、ロシアの原油、天然ガスがインドに輸出されるようになった。インドのロシアからの輸入額は21年末に比べて23年末には4倍以上に増えている。 インドをより深く自陣に引き入れようとして、西側諸国も中露陣営も躍起になっているが、インドは、経済的・政治的に居心地の良い「中立」の旗をなかなか降ろそうとはしないだろう。日本が積極的にインドとの経済、政治、防衛、文化、学術のあらゆる面で連携を図ることは、日本・インドのためにも、西側陣営全体にとっても重要である。 伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D.取得)。1991年一橋大学教授、2002~14年東京大学教授。近著に、『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。
伊藤 隆敏