3人集まれば起業できるスキルはコレに限る…「ギター、ベース、ドラム」がヒントのビジネス黄金トリオ
■講義はオンライン、仲間とはオンサイト これからの時代、大学が直面する大きな変革の波として、AIの影響が挙げられます。 ある予測では、10年以内に大学の半数が消滅するとも言われていますが、それよりも早くその変化が訪れるかもしれません。 これまでの大学の役割は、知識を提供することにありましたが、その役割はYouTubeや生成AIが代替するようになっています。すでにオンライン上には多くの無料の授業やすぐれた教材があり、AIが家庭教師として指導する未来も見えています。若者たちはAIを利用し、友達のように接しながら必要な知識をすべて学んでいくことができる時代が来るでしょう。 そのため、大学の価値は知識の伝達ではなく、人が集まり、何かを一緒に作り上げる場として再定義されるべきです。新しいワクワクするようなアイデアやプロジェクトを見つけ、それを仲間と共に実現する場として、大学は変わっていかなければなりません。 コロナ禍が収束しつつあるなか、私たちは学生に対して「無理にキャンパスに来なくてもいい」とアナウンスしましたが、それでも彼らは大学に足を運びました。これは、彼らが学校という場所の価値を理解しているからでしょう。ただし、講義はオンラインで受講し、仲間とはオンサイト(対面)で交流するという新しいスタイルが求められていました。 これからの教室は、ただ講義を聞くための場所ではなく、仲間とワイワイガヤガヤ話し合うための場所に変わりつつあります。仲間と共にいることこそが、彼らにとっての大きな価値なのです。 ■遊び心から生まれる日本の文化 AIの時代が到来するなかで、日本には大きなポテンシャルがあると信じています。 欧米と日本では、コンピュータや機械との向き合い方が異なります。欧米では、コンピュータやAIは知識を教える存在や、指示に従う存在とされがちですが、日本では、鉄腕アトムにはじまり、たまごっちや初音ミクといったキャラクターのように、友だちのような存在として受け入れられてきました。この感覚が、これからのAI時代において日本がリードする力となるでしょう。 例えば、絵文字文化も最初は日本の女子高生が生み出したもので、それが世界中に広がりました。このように、遊び心から始まった文化が、のちに大人たちに認められる形でビジネスへと発展していくのです。日本は、このような感覚を持っている国だからこそ、AI時代にもチャンスがあるのです。 日本の若者たちは、これからも友だちや仲間を大切にし、そこから新しい価値を生み出していくでしょう。宗教観や階級の壁が少なく、自由な発想が許される日本だからこそ、これからの時代において大きなチャンスをつかむことができるのです。 (構成=上阪徹) 【著者プロフィール】 中村 伊知哉(なかむら・いちや) iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長 1961年生まれ。京都大学経済学部卒、大阪大学博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。京都大学特任教授、東京大学研究員、デジタル政策財団理事長、CiP協議会理事長、国際公共経済学会会長、日本eスポーツ連合特別顧問、理化学研究所コーディネーターなどを兼務。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。MITメディアラボ客員教授、スタンフォード日本センター研究所長、慶應義塾大学教授を経て、2020年4月より現職。著書に『新版 超ヒマ社会をつくる アフターコロナはネコの時代』(ヨシモトブックス)、『コンテンツと国家戦略』(角川EPUB選書)など多数。
中村 伊知哉