電通に蔓延していた“真っ赤なウソ”「労働時間短縮=仕事の品質低下」を払拭した『鬼時短』8つの鉄則
2015年、電通に横行していた違法な長時間労働や勤務時間の過少報告が、高橋まつりさんの過労自殺を契機に社会問題化され、東京労働局が同社を家宅捜索、労働基準法違反で書類送検され、2017年には当時社長であった石井直氏が引責辞任した。 【マンガ】まさか、こんなものもまで…実は「メルカリ」売れる意外なもの その後、東京簡易裁判所から「法人としての電通」に有罪判決を下された同社は、労働環境改革を最優先事項に掲げ、新たに社長に就任した山本敏博氏がその責任者として小柳はじめ氏に時短改革の白羽の矢を立てる。 “電通の伝統”からの脱却を激闘するなか、1ヵ月で10万時間の削減を実現した同氏。その手腕を<【前編記事】管理職が「言ってはいけない」NGワード…大好物の「決まり文句」に、じつは社員が“ドン引き”しているワケ>に引き続きお伝えする。 ※本記事は小柳はじめ著『鬼時短』から抜粋・編集したものです。
品質を落とさずに、業務時間を30%削減する
これまでの電通の働き方の根底には、「時間と労力を省くようでは、取引先から、仕事の品質を問われてしまう」「競合他社だけでなく、電通社内の競争に負けてしまう」という強いプレッシャーがありました。そのため、労働時間短縮への不安が、社内に渦巻いていたのです。 後に「22時以降の労働」が原則として禁止されたとき、ある大手広告主のマーケティング担当役員の方が、わざと22時過ぎにCM撮影現場を訪れたことがありました。 「電通の方針が間違っているということを、身をもって示す」ためだとおっしゃる。それは極端な例でしたが、当時、多くの取引先が「電通が夜中に働かなくてどうするのか」と感じておられることも伝わってきました。 しかし山本社長は、「仕事の品質を落とさずとも、業務時間を30%削減することはできる」という姿勢を変えませんでした。それを社員に伝えるために、山本社長は、あらゆる機会を利用して社員に対して発信し続けました。 「労働基準法違反を、ゼロにする」 「労働時間を減らしても成果をあげられるよう、2年間は環境整備と業務改革を最優先に投資する」 「新たに生み出した時間で社員がコンディションを整え、成長することが、じつは、会社の成長につながる」 山本社長は、こうしたメッセージを繰り返し繰り返し訴えました。 それによって、社員に対して、「得意先に根強い、『電通の労働時間短縮=電通の仕事の品質低下』という固定観念を払拭してみせないか?」と呼びかけたのです。