山下智久のコミカルな演技が光る!福原遥との共演ドラマ「正直不動産」でコメディー作品との相性を再認識
アイドルとして芸能界デビュー後、「クロサギ」(2006年、TBS系)、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」シリーズ(2008年ほか、フジテレビ系)など主演作を次々とヒットさせてきた山下智久。近年は、「神の雫/Drops of God」「SEE HEAR LOVE ~ 見えなくても聞こえなくても愛してる ~」(共に2023年)といった海外との合同製作ドラマや映画に主演するなど、世界を軸に活動の場を広げている。 【写真を見る】「正直不動産」(ファミリー劇場) そんな彼が、3年ぶりに日本のドラマに主演したのが「正直不動産」(2022年、NHK総合)。どちらかというとクールでストイックな人物を演じることが多かった山下が、人間くさい主人公をコミカルに演じた。 成績1位を維持し続けるヤリ手の不動産営業マン・永瀬財地(山下)は、カスタマーファーストの新人・月下咲良(福原遥)とペアを組むことに。営業は売り上げが第一、顧客にとって都合の悪いことはあえて言わないといった口八丁の営業テクニックを見せつけていく。しかしある日、祠と石碑を壊したたたりによって、嘘をつこうとすると体の中から風が舞い上がり本音しか話せない体になってしまう。これまで嘘まみれだった永瀬は、その場しのぎのことを言えなくなってしまい右往左往。そこからは顧客や周りの人に本来言いたくない本音をぶつけていく。 不動産業を知ることができるお仕事ドラマの側面を持ちつつ、突然嘘がつけなくなった永瀬の成長ドラマでもあった本作。山下の久しぶりの連続ドラマ出演ということもあり人気を集め、2024年にスペシャルドラマ、シーズン2と続編が作られるほどヒットドラマになった。 山下が演じる永瀬は「ライアー永瀬」と呼ばれるほど口からでまかせを言い続ける人物。顧客だけではなく上司や気に入った女性に対して心地の良い言葉ばかりを並べていい顔をするため、彼の本性は誰も知ることがなかった。そんな中、嘘がつけなくなり人をバカにしたような本音さえも口から出てしまう彼は、今まで見せたことのない表情を見せるようになる。 嘘をついているときはそれが悪いという思いを感じさせないクールさがあったが、嘘をつけなくなってから一人でパニックになって戸惑ったり怒ったりと、一気にメリハリのある演技をする。この演技が山下の真骨頂。オーバーに演技をするのではなく、クールな中にもどこか温かみを感じさせる演技を見せる。どんな役でもリアルを感じさせる演技をする彼だからこそ、あり得ない設定のほうでの演技が光るのだ。 特に第1話のラスト、本音を言って顧客から笑顔を引き出したときの柔らかな表情は、これまでに見せたことのない新たなキャラクターの誕生を予感させた。そして嘘がつけないと腹をくくってからは「残念ながら、私は嘘がつけない人間なんです」と覚悟を決めた表情になる。そのこれまでとの表情の違いが見ている人を惹きつける。とはいえ現状に慣れるのではなく、本音が口から出てしまうことに常にあたふたしているのが永瀬の魅力。回を重ねるごとに愛らしく見えてくるから不思議だ。 22歳のときに主演した「プロポーズ大作戦」(2007年、フジテレビ系)以降、近作の「ブルーモーメント」(2024年、フジテレビ系)を含めても、コミカルな演技は本作「正直不動産」くらい。コメディー作品と相性のいい山下の人間味あふれる演技に注目してほしい。 文=玉置晴子
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