“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」 去年5月の地震後に研究者が指摘していた「一番怖いシナリオ」
地殻変動は、地球のマントルを覆う「地殻」に力が加わり、年に数ミリから数センチ程度、ゆっくりと動く現象です。こうした大地のわずかな動きを捉えるために、人工衛星からの電波を受信して地上の位置を正確に測る「GNSS」と呼ばれる仕組みが使われています。GNSSは衛星測位システムの総称で、中でもスマートフォンの位置情報やカーナビゲーションに利用され、広く知られているのがアメリカの「GPS」です。 国土地理院が約20キロ間隔で全国約1300か所に電子基準点を設置しているほか、近年は携帯電話会社も基地局に独自の基準点を設け、精度の高い観測を可能にしています。 断層がずれて地震が発生すると、地表では地殻変動が観測されます。言い換えれば、地殻変動を測ることで、地下で断層がどう動いたかを調べることも可能で、GNSSのデータを地震の予測に役立てようとする研究者もいます。京都大学防災研究所の西村卓也教授は、地殻変動のデータから地下の断層に溜まっているひずみを調べ、地震を予測する研究を20年以上行ってきました。 その西村教授も「前例がない」と話すほど珍しい動きが、珠洲市で起こったのです。 国土地理院が珠洲市内に設置した観測点では、地震活動が始まった2020年12月からの約1年間で、地盤が3センチほど隆起する謎の地殻変動が起こっていました。西村教授は「火山がないところで、これほど顕著な変動がみられることは今までなかった」といいます。 地殻変動の原因を探るため、西村教授や金沢大学などの研究グループは、2021年9月から、珠洲市や能登町に独自のGNSS観測機器を設置。さらにソフトバンクが提供するGNSS観測網のデータも組み合わせることで、研究グループは、2020年11月から2022年12月までに最大で約7センチの隆起を観測しました。また大谷小中学校とみさき小学校の2点間の距離が、観測を始めた2021年秋以降、約3センチ伸びるなど、珠洲市を中心に地盤が膨張する動きも捉えることに成功しました。