戸郷翔征「僕の一番の持ち味の球で」初のノーヒットノーラン決めた! 甲子園で沢村栄治以来、巨人88年ぶり快挙
◆JERA セ・リーグ 阪神0―1巨人(24日・甲子園) 巨人・戸郷翔征投手(24)が24日の阪神戦(甲子園)で自身初のノーヒットノーランを達成した。プロ野球89人目、101度目。9回に四球を1つ与えたが、123球で抑えきった。巨人では2018年の山口俊以来13人目、17度目。甲子園に限れば、1936年9月25日タイガース戦の沢村栄治以来、球団88年ぶりの快挙だ。エースの快投でチームは引き分けを挟む連敗を4で止め、今季甲子園初勝利。首位・阪神とのゲーム差を2とし、交流戦前の勝率5割以上も確定した。 【写真】ノーヒットノーランを達成し、岸田行倫と抱き合う戸郷翔征 バットが空を切ると、戸郷は両手でガッツポーズし、大歓声を全身で受け止めた。1―0の9回2死二塁。G党は偉業を願い、虎党は屈辱回避を祈る。4万2595人の大観衆が醸し出す異様な雰囲気の中、中野への1ボール2ストライクからの4球目、この試合の123球目は最大の武器だった。「僕の一番の持ち味の球で最後、決めにいこうというのはあった」とフォークで空振り三振に斬った。プロ野球89人目、101度目のノーヒットノーラン達成。貫き続けたポーカーフェースに笑みが広がった。 駆け寄った岸田と抱き合った。ベンチから真っ先に飛び出してきた長野には水を浴びせられるなど、ナインの手荒い祝福は、最高な瞬間だった。「言葉では表せないぐらいの感動で、今までやってきたことが間違いじゃなかったんだなって」と感無量の面持ちだった。 伝説のエースばりの投球だった。3回と5回に失策で出塁を許すも、最速152キロの直球に鋭く落ちるフォーク、スライダーなどでアウトを築いた。回を追うごとに「みんなの空気が静まりかえって」と独特な緊張感で近づく快挙に気付いたが「意識したらいけない」と冷静だった。「一つの目標でもあった」という大記録は、高校時代にも立った思い出の甲子園で達成。巨人投手の甲子園でのノーノー達成は1936年の沢村以来、88年ぶり。「すごいな」と目をまん丸にしながらも「甲子園でできたのは縁を感じます。少しはチームの雰囲気を上げられたかな」と胸を張った。 感謝の思いを胸に持ち続けている。まだ入団間もない頃の戸郷がヒーローインタビューに応じた姿を見た聖心ウルスラ学園時代の恩師・石田敏英さんは、ある言葉が引っかかった。「『野手が打ってくれて勝つことができました』って言っとってね。『野手の方』でしょうと。常に感謝の気持ちを忘れないようにしなさい」と連絡を入れた。 戸郷は言う。「ウルスラに呼んでくれた石田先生がいなかったら今の僕はいない」。野球だけでなく人間的にも成長できたのは、先生の存在があったから。すぐに反省し、正した。オフに母校のグラウンドで自主トレを行うまな弟子の姿を見ながら「偉くなればなるほど頭が低くないとね。今の彼の姿を見ていると、安心しています」と目を細めた石田さん。この日も戸郷は「ノーノーができて、僕に関わってくれた人にすごい感謝の気持ちです」と頭を下げた。常に仲間を思う右腕だからこそ、バックも懸命に守り、成し遂げられた快挙だった。 「今日だけは余韻に浸りながら夜を迎えたいなと思います」と喜びをかみ締めた。伝説に名を刻んだ瞬間は、ファン、チームメート、そして戸郷の胸に深く刻まれた。(水上 智恵) 巨人杉内投手チーフコーチ(戸郷のプロ1年目にファーム投手コーチ)「良かったね~、ハラハラしちゃったよ。ある程度の投球はしてくれるかなと期待していたんですけど、まさかヒット1本も打たれないとは。1人の走者を出して、それが同点の走者になる可能性があるので、僕(12年にノーノー達成)よりも全然緊張する場面で、しかもビジター。あのプレッシャーの中でよく抑えてくれました。甲子園でノーヒットノーランするのはすごいこと」
報知新聞社