58歳会社員でローン残高「1000万円」です。じきに定年ですが、退職金も使って住宅ローンを「繰り上げ返済」したほうがよいでしょうか?
2022年頃から、フラット35などの固定住宅ローン金利が上昇しつつあります。住宅ローン金利は日銀の金融政策と密接に関係しているため、将来の動向を確実に予測するのは難しいことです。しかし、今後住宅ローン金利が下落するよりも上昇する可能性のほうが高そうです。 住宅ローンを借り入れている人の中には、早めに繰り上げ返済したほうがいいのではと考える人が多いかもしれません。本記事では繰り上げ返済をしたほうがいい人、繰り上げ返済の注意点などを紹介します。
早めに繰り上げ返済するメリット
繰り上げ返済を行うことで、利息の返済軽減効果があることは広く知られています。繰り上げ返済時期が早く、その返済金額が大きいほど利息軽減効果は顕著に表れます。 仮に期間10年間、金利2.5%でローン残債が1000万円ある人が繰り上げ返済した場合のシミュレーション結果を図表1に示します。この中で最も利息軽減効果が高いのは、2年後に500万円を返済した場合だということが分かります。 【図表1】
三井住友銀行 一部繰上返済シミュレーション より筆者作成 図表1で返済時期を2年後としたのは、58歳の人で2年後に退職金を得ることができると仮定したからです。しかし、早い段階で繰り上げ返済をするほど大きな利息軽減効果があるため、資金に余裕がある人は早めに繰り上げ返済することをおすすめします。
繰り上げ返済がデメリットになる場合も
早い段階で繰り上げ返済を行うことで利息軽減効果は高まりますが、必ず繰り上げ返済したほうがよいというわけではありません。 まず注意すべきなのは、繰り上げ返済だけにすべての資金を充てないようにすることです。繰り上げ返済は金額を大きくするほうが確かに利息軽減効果が高まりますが、生活において余裕資金が全くない状態はリスクが高くなります。 病気やけがによる入院、急な会社の倒産による失業など、さまざまな理由により収入が減ってしまう可能性もあります。予期せぬトラブルに備える資金を「生活防衛資金」や「生活予備資金」と呼びますが、一般的には生活費の3~6ヶ月程度を蓄えておくのがよいとされています。生活防衛資金の具体的な金額は家庭によって変わってくるので、一度検討してみるとよいでしょう。 また、住宅ローン控除を活用している場合にも注意が必要です。繰り上げ返済により、返済が一定期間よりも短くなると住宅ローン控除対象から外れる場合があります。 さらに、繰り上げ返済の際には手数料が必要になる金融機関もあることに注意が必要です。一部繰り上げ返済の場合は無料、ネット返済なら無料という金融機関もあります。住宅ローン借入時には金利だけに注目するのではなく、繰り上げ返済条件も検討することが望ましいでしょう。
状況によって繰り上げ返済を検討しましょう
基本的に繰り上げ返済はメリットが大きいものなので、資金に余裕がある人は検討してみましょう。ただし、個々の状況によってメリットの度合いは異なります。大切なのは無理をせずに返済することです。 住宅の購入は人生で最も金額が大きい支出となることが多いです。自身だけで判断が難しいようであれば、専門家に相談してみるのもよいかもしれません。 出典 住宅金融支援機構 【フラット35】借入金利の推移 三井住友銀行 一部繰上返済シミュレーション 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除) 執筆者:御手洗康之 AFP、FP2級、簿記2級
ファイナンシャルフィールド編集部