米大統領選、脆弱な市場に「高い不確実性」もたらす-IMF
(ブルームバーグ): 国際通貨基金(IMF)は22日、米大統領選が市場と政策当局に「高い不確実性」をもたらしているとの見方を示した。民主、共和両党の候補者が示す貿易に関する優先事項が大きく異なっていることが背景だ。
最新の国際金融安定性報告書(GFSR)によると、すでに緊迫した地政学的背景の中でハリス副大統領とトランプ前大統領との接戦が繰り広げられており、金融市場にこれまで反映されてこなかった深刻な不確実性につながっている。
IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長はインタビューで、「市場の楽観論やバリュエーション水準と地政学的背景との間に緊張が生じており、それがさらなるショックを引き起こす可能性があると懸念している」と述べた。
米国の経済規模と、米国の政策が世界の金融と貿易に及ぼす直接的な影響を考慮すると、11月5日の投票は市場やIMFのような経済監視機関にとって不確実要因となる。
エイドリアン局長は、関税や産業政策、さらには報復の可能性をリスクとして挙げた。トランプ氏は中国からの輸入品に対し追加関税を広範に課すとしているほか、他の貿易相手国に対しても全面的な課税を実施すると警告している。
GFSRによれば、債務水準の上昇や世界の政局などがリスクだ。「目先のリスクを食い止める緩和的な金融環境は、資産のバリュエーション上昇や世界的な官民債務の増加、ノンバンクのレバレッジ利用拡大など脆弱(ぜいじゃく)性の蓄積を促進し、将来の金融安定に対するリスクを高める」と指摘した。
また、日米金融政策の方向性が異なるとの見通しを背景に円キャリー取引の解消が誘発され、日本株が急落し世界市場に波及した8月の出来事にも言及。
「2024年8月初旬に起きた市場の混乱では、日本と米国の両方で株式市場のボラティリティーが急上昇し、世界の資産価格が大幅に下落した。ボラティリティーの急上昇が金融機関によるレバレッジの利用と相互に作用し、非線形の市場反応を生み出して売りを加速させた場合に起こり得る激しい反応が垣間見られた」と説明した。