パシュート金メダルを生み出した日本の科学的美しい隊列
空気抵抗を減らすため 3人の縦に並んだときの横へのずれは40センチ以内、選手同士の前後の距離も1メートル以内に収める。科学的なデータから弾きだした鉄則を守りながら磨いたのは先頭交代の技術だ。 400メートルのリンクを6周するパシュートにおけるタイムロスは、先頭の交代時に起きる。0.2秒から下手すれば、0.5秒のロスがあるとされる。いかに、そのロスを抑えるのか。カーブの手前の直線でスピードを上げ、先頭を譲る際に、その選手は大きく外に膨らみ、後ろへ下がる。その動きにより空気抵抗を抑える壁となり、後ろの選手が最短距離で前へ出る。まるで陸上のリレーのバトン技術のようなテクニックである。 さらに日本は先頭交代の回数をソチ五輪時の5回から3回へと減らした。 この日の金メダルレースでは、エースの高木美帆が第1走を務めて、1.75周を受け持ち、続く佐藤が1.5周。準決勝で、ここを担った菊池彩花に替わり、休養十分だった佐藤の受け持ちを0.5周分増やした。続く高木菜那が1周でつなぎ、最後は再び高木美帆が1.75周で勝負を決めるという計算された勝利方程式だった。後半、へばって隊列もバラバラになっていたオランダとは対照的な日本らしい結束の力を結果に変えた素晴らしい「頭脳と努力」の勝利だった。 海外のメディアも日本のチーム力を絶賛した。 英国のBBCは、「日本は五輪新記録でオランダを下し驚きの勝利を挙げた。日本は2分53秒89の素晴らしい勝利を収めた。前回覇者のオランダは6周のうち3周をリードしたが、日本の見事な追い上げもあり、2分55秒48で2位に終わった」と報道。 NBCスポーツも、「日本はオランダが準々決勝で作った五輪記録を更新して金メダルを獲得した。日本とオランダは、この種目では近年無類の強さを誇り、2014年の五輪大会から主要大会では勝利を分け合っている。だが、平昌大会では、日本の女子スピードスケート陣は歴史的な戦いをしている。これまでの五輪でのメダル獲得総数は4個だったが、今大会ですでに5個のメダルを獲得している」と、日本女子スケート陣の躍進を伝えている。