松井秀喜と長嶋茂雄監督の4番1000日計画…東京ドームで自宅でホテルで「素振りの日々」
2001年まで指揮を執った長嶋茂雄監督。「球界の4番に育てる」という長嶋監督が掲げた4番1000日計画の下、松井秀喜はマンツーマン指導を受けて大砲に開花。高橋由伸も大きく影響を受け、全力プレーを毎日観客に見せるという野球哲学を培った。 【写真】 観客の声援に応える長嶋茂雄さんと松井秀喜さん(今年5月3日)
「本当にきつい」素振り50本…一本一本が真剣
1993年の松井入団から、素振りによる英才教育は連日続いた。本拠地・東京ドームはもちろん、遠征先のホテルや長嶋監督の自宅、都内のホテルで素振りをしてから神宮球場に向かったこともある。
東京ドームでナイトゲームがある場合、2人は午後3時半頃からミーティングルームにこもった。外角や内角など、監督が手にしたバットで示すコースめがけて振り、当たる瞬間に監督がバットを引っ込める。素振りは、短くて高い空気を切る音が出ると合格だ。
「よしっ」。音と全体のシルエットが良いスイングを何本か続けると、監督が合図をして終わりとなる。10~15分、50本超の素振りは「一本一本、真剣に振るから本当にきつかった」。その後、グラウンドに出てフリー打撃を行うのが日課だった。
監督がバットを引っ込めるのが遅れ、スイングした自分のバットと衝突したことがあった。「うおー、ゴメン、ゴメン」。長嶋監督が謝るほほ笑ましい光景もあったが、いつも張り詰めた空気が漂っていた。一度、知らずにドアを開けてしまった清水は、あまりの緊張感に驚き、慌てて閉めたことを覚えている。
「巨人の主力選手は絶対に休んじゃだめだ。お客さんはお前を見に来ている」「自分自身と向き合ってやるのが素振りだ。自分で考えながら毎日やれ」――。松井はその教えを実践。日米通算で1768試合に連続出場し、自宅など1人でも素振りによる調整を怠らなかった。
本塁打は日米通算507本。長嶋の444本を上回っている。「ドラフトでくじを引いてもらった時から、いろいろと導いてくださった。いろんな意味での『師』。ホームランの数字が超えただけで、長嶋茂雄を超えたとか、全くないですよ」。松井は永遠の師弟関係をそう語る。