自民党は「人材の砂漠」になってしまった…「選挙の神様」と「ベテラン政治記者」が断言…「誰が総理・総裁になっても自民党は負ける」
前編記事『幹事長を信用できない総理に解散はできない…『選挙の神様』久米晃と『ベテラン政治記者』星浩が政局ぶったぎり「自民党を壊した岸田総理」』に続き、自民党の終わりについて語り合った。 【一覧】「次の首相になってほしい政治家」ランキング…上位に入った「意外な議員」
自民党は人材の砂漠
星 今国会の会期末、6月解散の可能性が指摘されています。久米さんはないとおっしゃいますが、私はまだ五分五分であり得ると見ています。 岸田さんには、楽観的な見通しをつないで、先を読む傾向があります。裏金問題も、今回の処分でケリがつく。国賓待遇での訪米で議会演説を行い、脚光を浴びる。賃上げで、国民の懐が温まる。6月には定額減税が行われ、可処分所得も増える。これらの結果、岸田さんはうまくやっていると支持率が上がり、選挙で信を問う、というわけです。 久米 景気が本当によくなれば、岸田総理も解散を打てるかもしれませんが、解散できるほど支持率が上がっていれば、解散しなくても総裁選で再選されるわけですから。私は、岸田総理が6月解散に打って出ることはないと思っています。 星 岸田さんが思うように事が運ぶほど簡単ではないですからね。本来は側近に「総理、そんなにうまくはいきませんよ」と諫める人がいないといけないのですが、そういう人材が見当たらない。 仮に6月解散で自民党が大敗すれば、岸田総理が本当に自民党を壊してしまうことになる。 久米 支持率の低迷が続けば、いずれ政権は立ち行かなくなります。問題は、次を担う人材がいないということです。かつては、「三角大福中」や「麻垣康三」といった次の総理候補の名前が何人も挙がったものですが、いまはいません。石破茂元幹事長の待望論などまだ聞こえてきません。自民党の人材が払底している証拠です。自民党は人材の砂漠になってしまった。
投票に値する政治家がいない
星 安倍長期政権で、若手議員は政変を知らない。党内でケンカもしていないので、パワーが弱くなったことは否めません。 久米 政治家から志が欠落し、本当に質が落ちたと感じます。投票率の低下は、国民の政治への無関心からではなく、投票に値する政治家がいなくなったからです。 星 その原因はどこにあると見ますか? 久米 一つの要因に小選挙区制があるのではないでしょうか。政権交代が可能な二大政党制なんて誰が望んだというのでしょうか。結果、政党に所属していないと選挙で勝てない。カネを持っている人しか当選できない。それでは政界に新しい血も入らないし、政治家を志す若い人もいなくなる。これは日本にとって、不幸なことです。 星 世の中の多くは岸田政権のみならず、自民党全体に怒りを抱いているように見えます。 久米 日本は現在、多くの危機に直面しています。ウクライナ戦争で明らかになったのは、食料・エネルギーの危機。能登半島地震など災害の危機もあります。台湾をめぐる中国との危機も以前から指摘され続けています。しかし、岸田さんはこうした危機への対応は一つもできなかった。まあ、岸田さん一人の責任ではないのですが。 星 岸田さんは、たしかに防衛費を5年かけて43兆円に増額すると決めた。これは一種の危機対応として、評価する声はあります。しかし、その後がいけない。岸田さんは、防衛費増額は国民に負担をかけない形で行い、増税もほとんどしないという説明をした。国民からすると、別に増税も必要ない程度の危機なのかと、勘違いしてしまいます。 少子化対策にしても、年間出生数は80万人を切っていて、非常に深刻なのに、国民の負担は一人あたり平均月450円だと説明する。これでは危機感は伝わりません。 久米 自分の言っていることが正しいという自信があれば、おのずと説得力は備わるものです。説明から逃げているというのは、自分に自信がないということでしょう。 しかし、自民党内部から政権や執行部に対する不満の声があまり聞こえてこない。そこが自民党の危機です。5月の連休が終われば、さすがに危機感を抱いて、もっと声が上がると思います。なければ終わりです。