秋田の無人駅で「“がっこ”爆売れ」の謎現象 「漬物危機」に瀕した秋田の“お母さん”たちが、無人駅でがっこ作りを始めたワケ
2023年9月25日~10月末にクラウドファンディングを実施。蓋を開ければ目標額を超える312万9750円が集まった。クラファンの手数料や返礼品の費用150万円ほどを差し引くと、使えるお金は160万円ほど。それを工事費用に回し、残った分は今後の設備購入費に充てる。 ■がっこステーションが「新ビジネス」と認められた ついに2023年11月1日、漬物加工所併設「阿仁比立内がっこステーション」がリニューアルオープン。漬物製造許可に加え、密封包装食品製造許可、飲食店営業許可も取得した。がっこ市のメンバーだけでなく誰でもこの加工所で調理、販売する場として活用できる。
改修費用の半分を補助したのは、秋田県農林水産部農山村振興課が担当する「未来へつなぐ元気な農山村創造事業」の補助金だった。2022年に創設したばかりの新しい制度で、地域特産物のブランド化や農山村発の新ビジネスを後押しすることを目的にする。 がっこステーションの補助金申請が認可されたのは、3つの点で高ポイントだったからだと、同課調整・地域活性化チームの青木隆行さん(44歳)は語る。 「1つが、長く続けてきたがっこ市を存続させ、次世代の漬物作りの担い手を育成し、がっこ文化を継承していくということ。
2つめは加工所では漬物だけでなく、大阿仁地区の名産・伏影りんごを使ったジャムや豊富な山菜の加工食品も製造、販売していくこと。 3つめは無人駅の内陸線比立内駅を活用すること。無人駅が地域資源として生まれ変わる。まさしくこの補助金事業が求めるところです。非常におもしろいと思いました」 共同加工所でがっこ作りをするようになって、それまで何十年も自宅で秘伝の味を守ってきたお母さんたちは、初めてがっこ市メンバー、つまり他人の作り方を見ることになる。皆、興味津々。味見をさせてもらえば、作り方を知りたくなる。
「がっこ市のメンバーはそれぞれ自分のレシピを持っていて、何冊もノートに書き込んでいます。作り方を教えてくれる人もいるし、“企業秘密”だからって教えない人もいます。私たちはなんでもありなんです」とメンバーの鈴木良子さん(67歳)はにっこり笑う。 確かに独立採算制のがっこ市ではメンバーといえど、商売ではライバル。出品する商品の値段づけも、メンバーがつける値段をちらちらと横目で見ながら決めるらしい。 ■あえて「減塩運動」に反した商品づくり