棚橋弘至社長は、新日本プロレスをどう成長させていくのか ~社長就任インタビュー・前編
「一生懸命にプロレスをやる」以外の大切さに「自分で」気づくレスラーが出てきたら新日本プロレスは跳ねますね
――「棚橋弘至はなぜ~」では棚橋さんの「全力プロモーション」、大会PRのために大小にかかわらず地元メディアに出まくったことを取り上げました。コミュニティFMに行ったら「では一人で喋って下さい」と言われて30分間一人で喋ったり。 「バイタリティが求められましたね(笑)」 ――その後に「スイーツ真壁」真壁刀義選手や「ガサガサ声」本間朋晃選手たちが積極的に出ていった。 「地上波のバラエティ番組に出ていましたね」 ――問題は「その後」で。若手が出てこないかなと期待して見ていて、昨年の夏に「令和闘魂三銃士」が話題になりましたね。 「そうですね、海野(翔太)、成田(蓮)、辻(陽太)」 ――僕的にはいい企画だと思ったんです。 「そうですね、はい」 ――でも選手たちから猛反発を喰らって、今ではなかったことみたいに。なんならNGワードみたいな。 「新闘魂三銃士(棚橋、柴田勝頼、中邑真輔)みたいになってますね。歴史は繰り返します」 ――でも、新闘魂三銃士の中で、唯一、棚橋さんだけはノリノリだった。 「僕だけです。『やった、くくられた!』と思いました(笑)」 ――僕は、みんなが反発してるなら海野選手なんかは棚橋さんに倣って「よし分かった、俺が一人で令和闘魂三銃士を背負ってやる!」ぐらい言ってくれたら、と思いました。「みんなと一緒に反発」ではなくて、あえて逆を行けば目立つチャンスなのに。 「それは『嗅覚』ですね」 ――なるほど! 棚橋さんは令和闘魂三銃士をどう見ていたんですか? 「そうですねぇ。新日本の成功体験というか、闘魂三銃士でバーっと一時代を築いたので。で、プロレスファンも『この3人は期待されてる』と見やすくなりますよね」 ――はい、そう思います。 「ただ、それは新日本からのプレゼンテーションなので、やる側が乗らないと、観る側も乗れないわな、っていう(苦笑)。でもまた令和闘魂三銃士もまたここからドラマがいろいろと生まれるかな、と。棚橋、柴田、中邑がその時々で、いろんなシチュエーションでぶつかってきましたからね」 ――私は普段、格闘技村からお隣のプロレス村をのぞいてまして。 「はい、はい」 ――垣根を飛び越えて「あ、面白いな」と視界に入ってくるものはそんなに多くはないんです。 「情報としてね。プロレスの中の情報で止まっちゃうので」 ――はい。それでいうと、新日本プロレスでここ数年で垣根を飛び越えて目に入ってきたのがグレート-O-カーン選手。 「はい、彼は発信力がありますね」 ――オーカーン選手がアニメイベントに出演した写真を見たら、デカい身体とイカツイ風貌で周囲から浮き上がってて目立ってました。かつて、棚橋さんや真壁さんたち新日本プロレス軍団がルミネtheよしもとで芸人さんと共演したのを思い出しました。それで「令和闘魂三銃士」は久々に垣根を越えてきた感じがあって注目したのに、もう一つ盛り上がらずもったいないなと。そこを棚橋さんはどう見ていたのかな、と。 「そうですね……、クセが弱いかなと」 ――クセですか。 「本当に生きてきた時代によるので。もう馬場さん、猪木さんなんか『大クセ』じゃないですか」 ――大クセ(笑)。 「その次の世代の藤波さん、長州さんも、まあクセが強いじゃないですか。クセしかないというか(笑)。それで闘魂三銃士、それぞれの個性があるじゃないですか。それで棚橋、中邑。『チャラ男とクネクネ』と(笑)」 ――(笑)今やチャラ男社長と、世界のクネクネですよ。 「『世界のナカムラ』になってしまいましたけど(笑)。人の心に残るっていうのはとても難しいことだ、っていうのが僕の中にはあるので。だからこそ、何か人に覚えてもらいたいとか、これを言ったらプロレス界に目を向けてくれるんじゃないか、とか。『仮面ライダー』をきっかけにして、子供さんがプロレスファンになって貰えたらな、とか。そういう『一生懸命プロレスをやる』以外のところに目を向けられるレスラーの登場を待ちます」 ――はい。 「これはもう『こうしろ!』ってやっても、自主的に動いてない活動、発言なので。『ああ、やらされてんな』と思ったら、ファンの人には届かない、まったく響かないので」 ――ああ、なるほど。 「そこに気づくレスラーが出てきたら、また新日本プロレスは跳ねますね」 ――そこは、棚橋さんがアドバイスするとかではないんですね。 「やっぱりレスラー自身の気づきがないと動き始めないかな、っていうね」 ――内藤哲也選手のブレイクはまさにそんな感じでしたね。 「そうですね」