『ウィザードリィ』から転生したDRPGは如何にして「奇跡」となったのか?『エルミナージュORIGINAL』Steam日本語版の配信を機に改めて振り返る【特集】
※注意:本記事には、『エルミナージュ』シリーズのネタバレが含まれます。それをご了承の上、閲覧をお願いします。 【画像全10枚】 2024年5月24日にSteamで配信された日本語版『エルミナージュORIGINAL ~闇の巫女と神々の指輪~』。本項では同作がどんなゲームであったのかを振り返りつつ、同作が一部から「奇跡」とも称されるようになった、その理由を分析していきたいと思います。 そもそも『エルミナージュ』シリーズとは 『エルミナージュ』シリーズは『ウィザードリィ』シリーズの日本産スピンオフ『ウィザードリィ エンパイア』の流れを汲む3DダンジョンRPGで、第1作はPS2で2008年3月にスターフィッシュ・エスディから発売されました。 同年12月にはニンテンドーDSに移植され、シリーズ2作目が発売されて以降は第1作は『エルミナージュORIGINAL』と名前を変え、2011年にPSPに移植、2016年にはPC/ニンテンドー3DSに移植されました。 先日(2024年5月24日)Steamで配信された『エルミナージュORIGINAL』の日本語版は、2016年にメビウスからPCパッケージ版として発売された同作をSteamに持ち込んだものとなります。 本作の原点となるPS2版はロード時間や発売時期の悪さなどの問題などから大した話題にはならなかったのですが、ロード時間の問題が解決されたニンテンドーDS版から本作の魅力に気付いた人が激増し、その完成度の高さは各種掲示板などで奇跡的な作品であると称されることもあるほどでした。以下、その理由を筆者独自の見解を交えながら紹介していきたいと思います。 奇跡の原点その1:『ウィザードリィ』からの大幅な難易度の低下 1981年に発売された『ウィザードリィ』は多くのJRPGのクリエイターに影響を与え、そして日本で移植されたFC版や、日本独自のスピンオフ『外伝』シリーズなど、多種多様な作品が現れました。 が、そういった『ウィザードリィ』派生作の多くに共通していたのは「難易度の高さ」。近年でも『ウィザードリィ』第1作のリメイク版が配信されましたが、多数の難易度調整機能が付いたとはいえ、その難易度の高さは健在で、多くの配慮がなされたJRPGからするときわめてハードルの高い作品であったことは否めません。 しかしながら、『エルミナージュ』はそこに大幅に手を入れました。チュートリアルとなる最初のダンジョンには危険な敵はほとんど出現せず得られる経験値も多め、少し頑張れば序盤でも買える強力な武器が最初から店に1個置いてある、万が一パーティに死人が出ても拠点の寺院での蘇生は費用も安く、ほぼ確実に成功する……と、今までの『ウィザードリィ』的なものに比べて圧倒的にユーザーフレンドリーでとっつきやすい設計になっているのです。 実のところ「序盤が親切丁寧」というコンセプトはスターフィッシュ・エスディから2003年にPS2で発売された、『エルミナージュ』シリーズの実質的な前身とも言える『ウィザードリィ エンパイア3 覇王の系譜』で既に現れていましたが『エルミナージュ』はさらにユーザーフレンドリーです。ダンジョンのマップは基本的には見放題。そのうえでミニマップを表示するアイテムもチュートリアル中に十分入手できるよう配慮され、ダンジョンでは周囲の様子を常時2D見下ろし的に確認しながら進むことができます。 しかしながら、本作はただ簡単なだけではありません。最序盤のチュートリアルを終え、多数のダンジョンが解禁される段階になると、次の行き先をある程度自由に決められるようになります。その先の一部には初見殺しの内容や、その時点では非常に強力な敵も含まれており、ときには古いDRPGのような理不尽を感じることもあるでしょう。 とは言え、本作は全滅したりした際のリカバリーは比較的容易で、最初から高レベルダンジョンに潜れる点についてはハイリスクハイリターンな冒険が任意で楽しめるともいえます。本作では敵を眠らせるLv1魔術師呪文「ミサーマ」がかなり敵に効きやすい傾向がありますので、これをうまく駆使すれば格上の敵の撃破も充分に可能です。 奇跡の原点その2:「ハイマスター」による職業性能の特化、パーティ編成のバリエーションの増加 本作には『ウィザードリィ』シリーズや、それらのフォロワー作品には見られない職業が用意されており、また他作品に登場するような職業でも違った味付けやその仕組みが用意されているのが特徴です。 例えば「盗賊」は戦闘後に現れることのある宝箱の罠を高確率で外すことができ、序盤のパーティに必須の職業……という点は『ウィザードリィ』と変わりませんが、本作では一定のレベルを超えると習得する「ハイマスタースキル」(基本職ではLv26、中級職ではLv32、上級職ではLv36)によって、キャラクターの性質が大きく変化します。 「盗賊」の場合はハイマスタースキルとして「装備解除」「盗む」「物理攻撃力UP」の3つのスキルを習得します。「装備解除」は敵の装備している武器・防具を強制的に外して敵の能力を下げ、「盗む」は文字通り敵の所持品を盗むというスキルです。これらのスキルの習得によって、盗賊には「敵の装備を剥ぎ取り、盗む」という新たな役割が与えられます。一部の敵の装備品には非常に強力な効果を持ったものもあり、「盗賊がハイマスターになるとゲームが一変する」と言われるほどです。本作における職業の詳細な特徴は、次ページに「付記1:独断と偏見だらけのエルミナージュ職業解説」を用意しましたのでそちらをご覧ください。 <cms-pagelink data-text=”付記1:独断と偏見だらけのエルミナージュ職業解説” data-page=”2” data-class=”center”></cms-pagelink>本作に登場する16職すべてに何らかの長所があり、その中から6人パーティを組み立てるには無数のバリエーションがあります。 例えば古いタイプの『ウィザードリィ』では転職前提の踏み台に近かった戦士は最強の物理攻撃アタッカーという長所があり、クリア後でもその剛腕を存分に振るえますし、盗賊も装備解除・盗むの存在で独自のポジションを確立しています。 また、本作では「転職を1度も経験していないキャラクター」のみが装備できる、強力な通称「イノセント装備」があり、こういった装備もキャラクター育成プランに一役買っています。人によってまさに千差万別なパーティが組める、自由なパーティ編成システムを本作は実現しているといっても過言ではないでしょう。 さらにパーティ構築の自由度を高めているのが、作成したキャラクターに自作の顔グラフィックを割り振れる「フェイスロード」機能です。 この機能により、今までは文字、あるいは既存の顔グラフィックや職業アイコンだけであった自作のキャラクターたちに、自分のイメージ通りの顔グラフィックを付けることが可能になりました。この機能は2011年発売のPSP版から実装されており、データ改造などに頼らずに独自の顔グラフィックを付けられる機能は当時のコンソール機では珍しく、本作のファンコミュニティでは大いに話題になりました。 この機能を利用して、自作キャラクターたちに自分で描いた顔グラフィックを付ける、または(あくまで自分のプレイ環境の中だけでの楽しみとして)さまざまなアニメやゲームのキャラクターたちの冒険をより細かに想像し、まさしく「自分だけの冒険を楽しむ」ことができるようになったのです。 ゲーム的に言えばまったく有利になる点はない「フェイスロード」ですが、この機能のおかげでユーザーの想像力の翼をより広げることになっている点は間違いないと思います。 奇跡の原点その3:「クリア後が本番」というミームを実践した、クリア後の広大な世界の広がり 3DダンジョンRPGについては、「クリア後が本番」と言われることがあります。これはDRPGはクリア後のやり込みの比率が高いということを示す、DRPGファン間でよく使われるミームです。このミームに興味がある方は、次々ページの「付記2:「クリア後が本番」というDRPGを取り巻くミームについて」をご覧ください。 <cms-pagelink data-text=”付記2:「クリア後が本番」というDRPGを取り巻くミームについて” data-page=”3” data-class=”center”></cms-pagelink>そして、『エルミナージュ』シリーズは、この「クリア後が本番」というミームに真面目に立ち向かっています。 ※以降、本作のネタバレを含むのでご注意ください※ クリア後のダンジョンでは、「ちょっと情報量多すぎない?」と思うほどの強敵や、壮大な設定が初めて開示され、いっそ「第二部」と言ってもいいほど。 そこでは本編ラスボスの「アイローク」ですら独自の権力争いを行っている強力な悪魔たちの一体に過ぎず、それ以上の文字通りに「格の違う」敵が数設定されています。 本作でクリアに必要となる「神々の指輪」の製作者として序盤から名前が出てくる六大神であっても例外でありません。クリア後の世界では単なるフレーバーなどではなく、実際に彼らの分身「神影」と対峙することが可能です。その際の彼らのレベルは圧巻の約1000~1500……! 一方で本作ではプレイヤー側もほぼ際限なくレベルを上げることができるので、レベル上げを繰り返せばプレイヤー側もやがては神の(分身の)領域にまでレベルを引き上げることができます。 レベルによって効果が上昇していく「ハイマスタースキル」と合わせ、最初は名もなき冒険者でしかなかったプレイヤーキャラクター側も、強大な悪魔や神と張り合う領域の戦いを繰り広げることになります。こうした壮大な背景設定と途方もないインフレ、すなわち冒険の広がりは、まさしく「クリア後が本番」と呼ぶにふさわしいです。 今回筆者は改めて1からSteam版をプレイしたのですが、これらの背景設定については実は序盤から想像以上に伏線が張られていて、「ここまで手が込んでいたのか……」と驚かされました。Steam版『エルミナージュORIGINAL』で久しぶりにハルドラ・イールの大地を踏んでみようという方は、こうした伏線の散りばめられ方を探すのも1つの楽しみかと思います。 かくして、 「既存のDRPGの常識に囚われない、大胆な難易度の引き下げ」 「パーティ編成や冒険の自由度の高さ」 「『クリア後が本番』と呼ぶにふさわしい、クリア後の壮大な冒険の広がり」 の3要素が見事なバランスで調和して、本作は「奇跡」と称されるゲームに仕上がった……というのが筆者の見解です。 もちろん、本作にはクリア前の時点でも膨大な数のダンジョンが用意されているほか、クリア後にはさまざまな強敵との戦闘、そしていわゆる「強くてニューゲーム」もありますし、遊びつくそうと思えばいくらでも時間を費やすことのできるゲームです。 後のシリーズ作品に比べるとレベル4桁のパーティでも苦戦するような超強敵がいない、エキストラスキルなどの要素がない……といった点もありますが、それでも本作はテキストにも癖がなく、遊びやすい1作です。『エルミナージュ』シリーズに足を踏み出す第1歩として、筆者は本作を充分にお勧めします。 スパくんのひとこと プレイヤーに用意された高い自由度、はるかな高みまで作り込まれた世界観……やはり本作は今遊んでも「奇跡」スパ! タイトル:エルミナージュORIGINAL ~闇の巫女と神々の指輪~ 対応機種:PC(Steam/DMM/パッケージ版) 記事におけるプレイ機種:PC(Steam) 発売日:2024年5月24日 著者プレイ時間:85時間(DS版・PCパッケージ版含め) サブスク配信有無:無 価格:1,980円(税込) ※製品情報は記事執筆時点のもの <cms-pagelink data-text=”付記1:独断と偏見だらけのエルミナージュ職業解説” data-page=”2” data-class=”center”></cms-pagelink> <cms-pagelink data-text=”付記2:「クリア後が本番」というDRPGを取り巻くミームについて” data-page=”3” data-class=”center”></cms-pagelink> 付記1:独断と偏見だらけのエルミナージュ職業解説 この項目では、全16種の『エルミナージュ』の職業について解説します。 戦士 多くの武器・防具を扱う事ができる基本職です。成長が非常に早く、装備品の充実度は他の職業の追従を許しません。ハイマスタースキルは「物理攻撃力UP+1」で、レベルに応じて物理攻撃の攻撃力がアップしていきます。他の職業の攻撃力アップスキルに比べて攻撃力の伸び率が非常に高く、レベルアップの速さも併せて物理破壊力にかけては基本職といえど最強の職業になります。 魔術師 魔術師呪文を最も早く覚えられる基本職です。強敵にも通じることがある睡眠呪文「ミサーマ」、さまざまな精霊の力を借りて放つ精霊攻撃呪文、石化させて敵の動きを完全に封じる「ストーマ」、ダンジョンの任意の位置にテレポートする「ティオメンテ」、そして魔術師呪文究極奥義「エンテルクミスタ」など、強力な呪文を多数使えることが強みです。 ハイマスタースキルは「魔術師呪文威力UP+1」で、ただでさえ強力な呪文の威力がさらに上がります。さらに魔術師に限り火・氷・雷の攻撃属性値を装備で高めていくと「エンテルクミスタ」の威力が強化されるという仕様があり、とてつもない高レベルの魔術師が放つ「エンテルクミスタ」は全てを吹き飛ばします。但し、高い魔術師呪文抵抗を持つ敵や呪文を反射する「結界」スキルを持つ敵には充分に注意する必要があります。 僧侶 僧侶呪文を最も早く覚えられる基本職です。HP回復や状態異常回復呪文が充実しており、またそこそこの武具も装備できるため前衛に立たせても悪くない活躍をします。普通の武器が通らない霊系の魔物の「ディスペル」もでき、序盤では欠かせない職業です。 ハイマスタースキルは「僧侶呪文威力UP+1」「御霊解放」で、「ディスペル」の対象が敵全体になりディスペル成功時に経験値が入るようになるほか、回復呪文の威力もレベルに応じて上がっていきます。が、育成が極まってくると単体HP固定全回復の「フィリード」以外では回復呪文の威力が物足りなくなってくるため、極めるには見返りが薄い職業かもしれません。 盗賊 ダンジョンの隠された扉を見抜き、宝箱の罠を解除する迷宮探索には欠かせない職業です。本文中で解説したした通りハイマスタースキルの「装備解除」「盗む」でゲーム性が一変するので、育てておいて損はありません。また、敵から盗める武器には盗賊が装備可能な強力な武器も多いので、サブアタッカーとしても充分に役立ちます。「盗む」のために開けておくアイテム欄と、装備品の兼ね合いが悩みどころになりますが……。 錬金術師 錬金術師呪文を唯一覚えられる基本職です。錬金術師呪文は敵を状態異常にする呪文や素早さや呪文抵抗力、攻撃回数の操作や敵から物理攻撃を受けるデコイの設定といった、一見地味ですが使いこなすと強力な魔法が多く、また究極呪文「ゼオナダル」は戦闘開始から今まで使用された呪文の回数に応じて威力が変動する上、軽減・無効化・反射不可という、他に類を見ない特殊な攻撃魔法となっています。 また、拠点で素材となる「鉱石」を使用してアイテム強化や特殊な錬金アイテムを産み出すことができる「錬金」技能もこの職業の特色の1つで、ミニマップが閲覧可能になる錬金アイテムの「天使の小窓」は持っていると便利ですし、一定時間水中での行動を可能にする「空気の実」は水中ダンジョンを探索するのに欠かせません。 ハイマスタースキルは「錬金呪文威力UP+1」「高純度錬金」「分解」で、先述した「ゼオナダル」の威力をさらに高められるほか、一度「鉱石」を合成した武具を「分解」して鉱石と武具を取り外すことができ、また「高純度錬金」によりさらに効果の高いアイテム強化合成ができます。 錬金アイテムを作成する、あるいは簡単な装備強化をする程度なら酒場に最初から登録されている錬金術師1人で充分ですが、最強の強化アイテムの作成を目指すのなら、通称「廃錬金」と呼ばれる超高レベルの錬金術師の存在が必須になります。 使用人 『エルミナージュ』シリーズの職業の多様性を象徴するような基本職で、いわゆる「メイドさん」です。男性で作っても職業の英語呼称が「Maid」なのは気にしない。本職の特徴は「メイドリカバー」で、キャラクターがアイテムとは別枠で持っている薬鞄からターン終了時に回復アイテムを自動で使う技能になります。 これは「全快の薬」を有り余るほど買えるゲーム終盤になればなるほど有効で、半壊したパーティをターン終了時に一瞬で全快するという驚異のヒーラーとして活躍できます。またアイテム「紅茶葉」を使用することで、ダンジョン内で呪文の使用回数や職業独自のスキルの使用回数の回復も行えます。 また、それなりに性能の良い武器も装備できるので、軽装サブアタッカーとしても活躍できます。ゴールドを詰め込んで攻撃アイテムとする「貯金箱」を使用できるのもこの職業のみで、1億ゴールドを詰め込んだ「ブタの貯金箱」の一撃に耐えられる敵はほとんどいないとか……。ハイマスタースキルは「物理攻撃力UP」「迷宮のお茶会」で「紅茶葉」の使用効果が増加するほか、サブアタッカーとしても磨きがかかります。 司教 『ウィザードリィ』でもお馴染みの、魔術師呪文・僧侶呪文の両方を覚え、唯一アイテムの鑑定技能も有する中級職です。例によって、呪文の習得速度が非常に遅いのも『ウィザードリィ』譲りです。しかし呪文の使用回数が多いことはそれだけで便利で、かつアイテムの鑑定技能は寺院での「寄付」で経験値を得られることをはじめ、何かとお金が必要な機会が多い『エルミナージュ』シリーズでは有用です。 ハイマスタースキルは「魔術師呪文威力UP」「僧侶呪文威力UP」と2系統の威力呪文威力UPを習得しますが、それぞれの伸び率は魔術師・僧侶といった専門職にはやはり及びません。 狩人 盗賊には及ばないものの、隠し扉発見・宝箱の罠解除といったそれなりの盗賊技能を持ち、攻撃力の高い弓でアタッカーとしても活躍できる中級職が狩人です。特殊能力として「速攻」を持ち、使用回数制限こそあるもののターン最速で行動ができ、厄介な敵をピンポイントで排除するのに役に立ちます。また、「追撃」技能で状態異常にかかった敵にターン終了時に強力な一撃を放ちます。種族の能力として毒付与能力がある「ワービースト」と相性が抜群な職業です。 ハイマスタースキルは「物理攻撃力UP」「掃討射撃」で、状態異常にかかった敵をまとめて追撃するようになります。また、シリーズのお約束として、「錬金術師から転職した狩人は錬金術師魔法の使用回数が下がらない」という仕様(?)があります。狩人の性能を最大限引き出したいのなら、錬金術師呪文回数全9回の錬金術師から転職して作成するのがよいでしょう。 闘士 鍛えぬいた肉体を武器にして戦う中級職です。この職業の特徴は毎回の攻撃の際に50%の確率で「連撃」(最大4回)を行う点で、連撃を受けた相手は次の状態異常抵抗判定の成功率が低下します。攻撃回数が多く、最序盤ではバンテージの二刀流で爆発的な攻撃力を発揮する職業です。 しかし本職の欠点として、装備できる武器・防具がほとんどなく、ゲーム中盤まではバンテージ2本で敵をひたすら殴り続けることになるでしょう。防具に関しては忍者と同等のAC低下技能(後述)を持つため、レベルを上げていけば不安はかなり薄くなりますが、武器の少なさはかなり気になる点です。 盗賊がハイマスターになり、敵からの装備を奪えるようになると「竜の爪」などの強力な武器が使えるようになるため、闘士の真価はここから発揮されると言っていいでしょう。敵から盗んだ装備の大半は呪われているため、呪いを無効化できる種族「デビリッシュ」との相性が良い職業です(それ以外の種族では錬金による呪い解除が必須)。 ハイマスタースキルは「物理攻撃力UP」「闘争本能」で、連撃の最終段階でのクリーンヒット(敵回避率無視、ダメージ3倍)の確率が上昇します。勘違いされがちですが、連撃の発生率(50%)自体に影響はないので注意が必要です。また、後述する召喚師の契約抵抗率を下げる方法は闘士の連撃だけなので、召喚師を最大活用しようと思うなら本職の起用も必須となるでしょう。 遊楽者 『エルミナージュ』シリーズの職業の多様性を象徴する職業・その2な中級職です。遊楽者の特徴は「タロット」で、全22種のタロットを選択し、そのカードの正位置でのドローに成功すると有利な効果を得られるが、逆位置でドローしてしまうと敵に有利な効果or味方に不利な効果がかかってしまう……という、ハイリスクハイリターンな能力になっています。タロットの基本成功率は75%で、使用するたびに成功率が下がっていくので過信は禁物です。またボス戦では成功率が強制的に1%固定となるため、ボス相手にタロットに頼った戦術は通用しません(アイテム盗みや召喚契約を粘るといった特殊な理由で、わざと「太陽」逆位置(敵HP全快)を引き続けるという戦略があったりしますが……)。 「タロット」を抜きにすると、遊楽者は「魔術師呪文と盗賊技能を併せ持ち、特殊な魔法効果を放てる楽器も扱える軽戦士」といった感じの職業で、「いると何かと便利」といった感じの職業です。ハイマスタースキルは「物理攻撃力UP」「運命改変」で、タロット使用時のドロー成功率の減少割合を低減します。 巫 本シリーズでは「かんなぎ」と読みます。『エルミナージュ』シリーズの職業の多様性を象徴する職業・その3な中級職です。特殊能力として「結界」を持ち、敵の魔法を3回まで反射することができます(以降は無効化→ダメージ低減……と弱体化していく)。「結界」は敵の行動よりも早く発動するため、強力な魔法を操る敵との戦闘では頼りになります。 他には遊楽者と同じく特殊な魔法効果を発動できる「楽器演奏」技能と、通常の武器が通じない霊を殴れる「対霊攻撃」技能を持ちます。また、装備できる武器が一部の刀と対霊・悪魔への攻撃に特化した「札」に限られていることも特徴です。 ハイマスタースキルは「物理攻撃力UP」「古式」「降魔調伏」で、その中でも「古式」は胴体・腕・足といった防具装備部位にも武器である「札」を装備して攻撃回数を増やすという、他に例を見ないスキルです(このスキルのせいで、エルミナージュを嗜む紳士の間では超高レベルの巫はほぼ全裸で刀で殴りかかりつつ、身体中に張り付けた札からオールレンジ攻撃を仕掛ける巫女さんであるという認識が絶えないとか……)。 「巫女さん」というイメージにかかわらず、呪文は他職からの転職でない限り一切覚えないので注意が必要です。 召喚師 本体はほぼ何もできませんが、モンスター都の召喚契約・使役が行える召喚呪文を習得する中級職です。本作ではラスボスや裏ボスも含め、ほぼすべてのモンスターと契約することができます。 契約したモンスターは自由に召喚・召喚解除ができ、パーティの7人目のメンバーとして戦闘に加えることができます。強力な魔法を連発したり、ブレスで範囲攻撃を連発したり……といった使い勝手の良いモンスターも多く、そうしたモンスターを状況に合わせて使い分けられるあたりに強みがあります。 しかしながら、モンスターの捕獲はなかなか難しく(召喚魔法に対する抵抗チェックを最低2回連続で成功させる必要がある)、召喚魔法抵抗97%以上を誇るボス級の敵の契約には2階から目薬を注すかのような確率を潜り抜けなければなりません。闘士の項で召喚抵抗を唯一下げられる連撃が有用と書いたのはこのためです。連撃を駆使しても確率的にはかなり厳しいのですが、それでも強力なボス敵と契約を結べればパーティ全体が大きく強化されます。 ハイマスタースキルは「血の盟約」で、この能力があると召喚モンスターのHPに大幅な補正がかかるほか、召喚モンスターのレベルを召喚師のレベルまで引き上げるので、モンスターの持っているスキルもそのレベルに合わせて強化されるというメリットがあります。召喚呪文自体は召喚師から転職しても使用可能ですが、「血の盟約」のある召喚師とそうでないキャラクターの召喚したモンスターは同じモンスターでも強さに大幅な差が出ます。 但し、冒頭でも述べたように召喚師自体には戦闘能力が皆無に等しいので、他の職業で呪文を一通りマスターしてから召喚師になるのが望ましいでしょう。 神女 別名「バルキリー」、中立の女性のみが就ける中級職です(一部アイテム使用で男性も就けたりするが、気にするな!)。恵まれた装備品の数々と習得のそこそこ早い僧侶呪文が魅力で、とりあえずパーティメンバーに悩んだら入れとけ、くらいの安定感のある職業です。また「霊体攻撃」もあるので、序盤から霊系の敵を気にせずに殴れます。 ハイマスタースキルは「物理攻撃力UP」「降魔調伏」で、「降魔調伏」は霊・不死・悪魔種族の敵に2倍ダメージを与えるという悪を打ち滅ぼすにふさわしい能力です。神女向けの装備が多い槍の性能の高さや、最終的に回復魔法が各レベル9回使えることも含め、扱いやすいオールラウンダーな職業といえるでしょう。 君主 非常に能力値の高い善の者のみが就ける上級職です。僧侶呪文が使える戦士系職業という点で神女と共通しますが、こちらは槍の代わりに盾が持てるなど、防御寄りな性能に特化しています。本シリーズの君主が真価を発揮するのはハイマスタースキル「法院保護区」で、これはパーティ内の君主が状態異常に陥っていない限り、パーティメンバー全員の状態異常抵抗を上昇させるというスキルです。 首切り・石化を始めとする状態異常を当たり前のように飛ばしてくる終盤戦では、このスキルがあると生存率が大幅に異なります。但しこの能力を実感できるようになるためには充分なレベルが必要で(最低でもLv100はないと効果を実感できない)、君主自体は非常にレベルアップが遅い職業である点は注意してください。 侍 刀を装備できる東洋の戦士である上級職です。「メイン武器二刀流」により序盤から刀を二刀流でき、火力はかなりのものです。最強の刀である「村正」を装備できるのも侍だけです。また、習得速度や威力は本職にはかなわないものの、魔術師呪文も習得します。ハイマスターとなると「物理攻撃力UP」「つばめ返し」を習得します。 「つばめ返し」は物理攻撃を仕掛けられた時に一定の確率でその攻撃を無効にし、カウンター攻撃を加えるという強力なもので、極限まで育った侍は物理攻撃に対する最強の盾役としても活躍します。また高レベルのボス敵も「つばめ返し」を持っていることが多く、そうした敵との「つばめ返し」連打合戦は一見の価値があります。欠点らしい欠点は中盤に手に入る強力な刀が少ないことくらいでしょうか。 忍者 究極に肉体を鍛えた悪の者のみが就ける上級職です。『ウィザードリィ』と同様、武具を身に着けない状態でAC(アーマークラス:本シリーズでも低い方が回避率が高い)が下がりますが、本シリーズでは「AC低下有効」という特殊能力が付いた防具が登場します。これらの防具は忍者・闘士のAC低下能力を妨げることなく装備ができるため、本作では高レベルの忍者でも無理に裸でいる必要はなくなりました。 さらに盗賊技能のほかにレベルアップとともにクリティカルヒット率が上昇する「首切り」、戦闘開始時に自動的に隠れて敵の攻撃の対象から外れる&敵の奇襲を50%の確率で阻止する「警戒」能力を持ち、忍者がいるだけで奇襲によるパーティ壊滅の確率がグンと下がります(余談ですが、死んでいる忍者でも「警戒」の敵先制防止効果は働くため、パワーレベリングのための少人数パーティ構成に忍者の死体を加える冒険者もいるとか……)。 ハイマスターとなると「物理攻撃力UP」「闇討ち」「一閃」を習得します。これにより素手攻撃が射程無限かつクリティカル判定が2回発生という、素手で敵の首を飛ばすエキスパートとなることができますが、忍者が装備できるそこそこ強力な武器も多いため、武器を装備させて安定ダメージと高クリティカル率の両立を取るか、素手によるクリティカル連発のロマンを取るかはプレイヤーに任されているでござるよ、ニンニン。 <cms-pagelink data-text=”付記2:「クリア後が本番」というDRPGを取り巻くミームについて” data-page=”3” data-class=”center”></cms-pagelink> 付記2:「クリア後が本番」というDRPGを取り巻くミームについて 3DダンジョンRPG愛好家の間では、このゲームジャンルに対して「クリア後が本番」と例える例が多々見られます。実際のところ、この「クリア後が本番」というミームは日本独自で生まれたものと筆者は考えています。 3DダンジョンRPGで「エンディング後に倒すボスが存在する」という要素が初登場したのは1990年に発売されたFC版『ウィザードリィ3 ダイヤモンドの騎士』で、この要素は原作のPC版には存在していません。また、「エンディング後にしか行けないダンジョンがある」という要素が登場したのは1993年のGB版『ウィザードリィ外伝3 闇の聖典』であり、こちらも海外では発売されていません。『ウィザードリィ』本家シリーズの隠しダンジョンと言えば2001年発売の『ウィザードリィ8』に存在し、その中で作中最強のボスが登場するものの、クリア前の時点で足を踏み入れることが可能なダンジョンであり、こちらは「クリア後が本番」というミームとは無関係に実装されたものと思われます。 初代『ウィザードリィ』の時点で「クリア後が本番」という見方はあったのではないか?という意見もあるかと思いますが、これはアイテムコンプリートや限界までのレベル上げといった「ゲームの目的とは無関係な要素」であり、それらの「ゲームとは無関係な(やりこみ)要素」を一種の茶化しで「クリア後が本番」と呼び続けてきた結果、国産のDRPGにはエンディング後のダンジョンやトレジャーハンティングが求められるようになってしまった……と筆者は考えています。
Game*Spark ずんこ。