ゴーン逮捕の日、日産社長・西川廣人が考えていたこと…話題作「わたしと日産」は、なぜビジネスマン必読なのか【歴史学者・磯田道史氏が「心打たれた」と】
---------- 歴史学者の磯田道史氏は 「日産の歴史的経験を未来の道しるべに。本書の姿勢に心打たれた」と推薦する。高度成長、バブル、経営危機、V字回復、そしてゴーン逮捕──カルロス・ゴーン会長のもと、日産社長を務めた男はそのとき何を考えていたのか? 元・日産社長による衝撃の回顧録『わたしと日産 巨大自動車産業の光と影』がついに刊行された。赤裸々に明かされる白熱の手記の中身を明かそう。グローバル化の渦中にいる全ビジネスマン必携の書だ。(文中敬称略) ---------- 【写真】リーマンから371億円を騙し取り、懲役15年を食らった男がヤバすぎる
哲学者サルトルの親戚との立ち話
カルロス・ゴーンが東京地検特捜部に逮捕されたのは、2018年11月19日夜のことだ。この日の午前中、西川廣人社長とフィリップ・クラン副社長は、東京・大手町で開かれた「日仏ビジネスサミット」に出席している。 〈イベントのために、ルノーの名誉会長だったルイ・シュバイツァー氏がフランス外務省の顧問のような立場でアニエス・パニエ=リュナシェ仏経済・財務副大臣とともに来日していた。 私は式典に先立って、シュバイツァー氏と久しぶりに顔を合わせて、しばらく懇談した。副大臣とクランも同席して四人の会話だったから、昔話に花が咲くといった調子ではなかった。「サイカワはルノーと日産の将来に対してネガティブな発言をしている」などと喧伝されている最中だったが、シュバイツァー氏は穏やかな話しぶりで、 「ミスター・サイカワ、アライアンスの発展を願っているよ」 といったトーンで終始した。私にとってシュバイツァー氏は是非とも味方になってほしい人である。ゴーン会長の不正が発覚したこと、東京地検特捜部による聴取あるいは逮捕が想定され、今夜から大騒ぎが始まる可能性が高いこと。切羽詰まった状況をすべて打ち明けたかった。しかし捜査当局が絡んだ案件だけに、のどまで出かかった言葉をのみ込むほかなかった。〉(『わたしと日産』177~178ページ) なおルイ・シュバイツァー氏の大叔父はアルベルト・シュバイツァー(ノーベル平和賞受賞者)、哲学者サルトルは親戚という華々しい家系だ(『わたしと日産』180ページ)。
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