不買運動あっても、どこからともなく市場に並ぶ中国製品 インドの路上靴店
アフリカやアジアの国々の市場では、その乱雑さや賑わいに圧倒され、また魅了されることがしばしばある。インド北部のスリナガルで見た路上靴屋も、そんな混沌とした光景の一つだった。 所狭しと山積みにされた靴やサンダルで歩道は埋まり、かろうじて歩けるくらいの隙間を人々が行き交う。サイズや形がごちゃ混ぜになったこの靴の山から、気に入ったものを探すのはなかなか面倒にも思えるが、路上では整理のしようがないのだろう。買う気はなかったが、一つ手に取ってみた。思った通り、ほとんどが中国製だ。 数か月前、インドの右派や保守派を中心に、中国製品のボイコットが呼びかけられた。インド北東部シッキムに近いブータンの中国国境で10週間にわたって続いた、印中両軍の睨み合いをうけてのことだ。中国が国境を越えて道路建設を始めたのがきっかけだった。 しかし、中国の対インド輸出の比率はわずか2パーセントほどなのに対し、インド人たちは日常生活の中で中国製品に深く依存している。靴に限らず、衣類や玩具、電気製品から日用品に至るまで、インド庶民の生活は廉価な中国製品なしでは成り立たない。中国製品がボイコットされれば、中国よりもインドの人々の方がダメージを受けてしまう。 「アジアの竜と象」と言われるほどの経済二大国となった中国とインドだが、ガチでぶつかればまだ竜(中国)の方に軍配が上がりそうだ。 (2011年7月撮影・文:高橋邦典) ※この記事はフォトジャーナル<世界の市場の風景>- 高橋邦典 第53回」の一部を抜粋したものです。