物流危機の今、なぜ「ダブル連結トラック」が注目されるのか? “2台分輸送可能”だけじゃないその実力、しかし「駐車場不足」という大問題も
実は意外と小回りがきくダブル連結トラック
ダブル連結トラックは、そのサイズから「さぞかし運転が難しいのだろう」と思われがちだ。NLJによれば、全長17.5mのセミトレーラーと全長25mのダブル連結トラックを比較すると、ダブル連結トラックのほうが1m以上小回りがきくという。 ダブル連結トラックは、ドリーと呼ばれる機構によってトラクタとトレーラーを連結している。右左折時には、トラクタ側にオーバーハング(尻ふり)が生じることで、ドリーが旋回方向に対し外側に引っ張られ、旋回時の専有幅が小さくなる。 一方で、バック時(後進時)には、注意が必要だ。左右に旋回しながら後進し、狙った場所にピタリとダブル連結トラックを停車させるのは、高い運転技量を備えたダブル連結トラックのドライバーでも難しい。したがって、ダブル連結トラックを、もし後進させなければならないときでも、まっすぐに後進することが基本となる。 高速道路各社は、ダブル連結トラック専用駐車マスの整備を進めているが、それでも専用マスの数は、2024年3月末現在、全国合計 「152か所」 しかない。現在、高速のSA・PAにおけるトラック駐車スペース不足が問題になっているが、ダブル連結トラックの場合は、元々専用駐車マスの数が少ない上、一般のトラック駐車スペースには、駐車できないケースがほとんどのため、さらに深刻だ。このように、ダブル連結トラックの運行については、さまざまな制約がともなう。 とはいえ、ドライバー不足、あるいは「2024年問題」の切り札として、注目を集めていることも事実だ。例えばセンコー(大阪市)では、自社で行うダブル連結トラックの運行を、現行の8編成から、2030年には100編成を目指すことを発表した。同社によれば、100編成体制時には、約16万6000時間・約59名分のドライバー省人化を実現した上で、二酸化炭素排出量は年間約6600t抑制可能だと試算している。 後編では、センコー に聞いたダブル連結トラック運用の苦労や、ダブル連結トラックの製造を行う日本トレクスなどに話を聞き、またNLJの取り組みも紹介しながら、さらにダブル連結トラックの可能性へと迫っていく。
坂田良平(物流ジャーナリスト)