【衝撃デビュー、ドラ1左腕の原点❶】一度も投げられなかった中学3年間…中2で決断した左肘手術 担当したのはあの名医
プロ初登板初先発した西武のドラフト1位ルーキー、武内夏暉投手(22)が7回1安打無失点と圧巻の投球を披露し、プロ初勝利をマークした。 ■【秘蔵写真】豪快なバッティングフォームを披露する折尾愛真中時代の武内夏暉 2月、北九州市出身の武内に「地元で特にお世話になった人は」と尋ねると迷わず答えた。「折尾愛真中の安部監督です」。小学5年時に左肘を痛めた武内が一度も投げられず、野手に専念した3年間の恩師だ。 同中野球部は武内が入学した年に創部。安部多加弘監督(49)は高校年代で活躍する選手を育てるため、選手に無理な負担をかけず、自主性の育成に力を注いだ。当時左腕はいなかったが、武内の両親と相談し、肘に負担をかけないよう一度も投げさせなかった。 2年夏に肘の痛みが悪化すると、手術を勧めた。「高校に入ってからすると、高校野球ができなくなる。今なら間に合うと思い切った」。約10カ月間練習できない間、道具の出し入れや試合のスコアを黙々と書く武内の姿に、安部監督は「サポートを嫌がらずにやっていた」と感心した。 当時学校近くのグラウンドは週2回しか使えず、学校敷地内に整備したブルペンでティー打撃の練習をするなど、決した恵まれた環境ではなかった。それでも学校の陶芸室を掃除して部室にするなど、自分たちで一からつくりあげた。武内は「投げられずに苦しかった時期だけど、支えてくれた」と前を向く力になった中学生活を感謝した。 中2で決断した手術。担当したのは、ラグビー日本代表のマイケル・リーチ(BL東京)らトップアスリートを執刀してきた産業医科大若松病院(北九州市)の内田宗志医師。多忙ながら地元で通っていた病院の紹介で巡り合え、左膝の軟骨を肘に移植して投げられるまでになった。「本当に縁に恵まれました」。武内にとっては忘れられない3年間だ。(末継智章)
西日本新聞社