アバルト695コンペティツィオーネは、“純ガソリン車”ならではの歓びを味わえるラストチャンスかも!?
電動化が進むなかにあって純ガソリンエンジン搭載のホットハッチである、アバルト「695コンペティツィオーネ」の魅力とは? 小川フミオが考えた。 【写真を見る】新型アバルト695コンペティツィオーネの内外装
アバルトの変遷
ホットハッチという言葉を聞いてピンとくる人なら、アバルトの695コンペティツィオーネにハマるかも。全長3660mmのボディに、132kW(180ps)のエンジン搭載。かつ乗ったのはマニュアル変速機仕様なので、そこにも、もうひとつのファントゥドライブがある。 アバルトはご存知のとおり、イタリアのフィアットのスポーツブランド。いまでこそ、BMWのMとかメルセデスのAMGとかトヨタのGRとか日産のオーテックとか、いろいろあるけれど、アバルトの誕生は1971年だから(アバルトの設立は1949年)、時代に先駆けていた。 アバルトは、フィアット車をベースに、もっともスポーティに仕立てられた仕様で、モータースポーツでも活躍。たとえば、フィアット131の2ドアをベースにした131アバルトラリーというグループ4のマシンは、世界ラリー選手権で、1977年、1978年、1980年とマニュファクチャラーズ選手権を獲得している。 131アバルトラリーのモチーフは、今回試乗した特別な695コンペティツィオーネ トリビュート131ラリーでも発見できた。ヘッドレストレイントあたりにシルエットがエンボス加工されているのだ。 と、いっても、コレがコレと分かる人はどれだけいるんだろう。逆に、わからない人は、この695に興味を示さないかもしれないが。 ちなみに695も、往年のフィアット・アバルトを想起させる、伝統的な車名である。オリジナルの695はフィアット「ヌオーバ500」をベースにしたモデルで、発表は1964年。いっぷう変わった車名は、アバルトがボア(エンジンピストンの内径)アップして689ccに拡大した排気量に由来する。その前に「595」があったので、この車名に落ち着いた。 アバルトはそもそも、フィアット車を中心に排気管のマフラーを独自設計してパワーを引き出すビジネスでお金を稼いできた。695も、気化器を含むエンジンやマフラーやボディパーツとして販売され、レース好きが自分のヌオーバ500に組み込み、当時の欧州の700ccカテゴリーのレースに出走していたのだ。 今のアバルトが500の“ハイエンドモデル”として695を開発したのは、2010年の「695トリブートフェラーリ」が最初だ。そのあと、2013年に「695エディチオーネマセラティ」が出て、2015年にはレース用の「695アセットコルサ」と並行して「695ビポスト」が登場した。 695ビポストはドグクラッチといって、通常のマニュアル変速機のようなシンクロメッシュ機構をもたず、ドライバーがエンジン回転を合わせて“ポンッ”とシフトアップとシフトダウンするレース仕様。 メリットはすばやい変速が出来るところで、すごいクルマ作ったなあと私も感心したものだ。 2022年にアクラボビッチ社のエグゾーストシステムをそなえた「695エッセエッセ(SS=スーパースポーツ)が出たあと、2023年3月に「695ツーリズム」695Cツーリズム」そして695コンペティツィオーネが発売され、5月に今回のアバルト695コンペティツィオーネ トリビュート131ラリーが出たのだ。