【MLB】メジャー・リーグでの下克上は今では当たり前 今年のポストシーズンの行方は?
【MLB最新事情】 公式戦は最後の1週間を残し、ナ・リーグではドジャース、フィリーズが成績上位でポストシーズンの第1シードの座を争っている。とはいえ、近年のメジャー・リーグでは公式戦とポストシーズンは別物というのが周知の事実だ。 ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は9年連続ポストシーズンに進出するが、世界一になったのは2020年の1回だけ。 「メジャー・リーグでは、ポストシーズンで勝てるかどうかは運の要素が大きい。最高の選手をそろえたチームが勝つわけではなく、そのときに勢いのあるチームが勝つ。これはプレーオフのフォーマットが理由」と監督本人は説明している。 ワールド・シリーズとリーグ優勝決定シリーズしかなかった時代、つまりワイルドカード制度導入前は、公式戦で100勝以上を記録した72チームのうち32チーム、44.4%が世界一に輝いた。 しかし、1994年にワイルドカード制度が導入されて以来、100勝以上した43チームのうち、ワールド・シリーズを制したのは6チームで確率は13.9%にとどまっている。 その中でも圧倒的だったのは114勝した98年のヤンキースと106勝の22年のアストロズ。ポストシーズンではともに11勝2敗だった。95年以降、4月から10月まで一貫して強かったのはこの2チームだけかもしれない。 一方、終盤で勢いに乗りワイルドカードから勝ち上がったチームは、97年のマーリンズ、02年のエンゼルス、03年のマーリンズ、04年のレッドソックス、11年のカージナルス、14年のジャイアンツ、19年のナショナルズ、23年のレンジャーズの8チームもある。 またシーズン序盤はつまずくも、終盤に調子を上げて地区優勝、世界一まで駆け上がったのは00年・87勝のヤンキース、06年・83勝のカージナルス、21年・88勝のブレーブスの3チーム。 最高のチームが勝つわけではなく、そのときに勢いのあるチームが勝つ。筆者としては、この方法について長い公式戦の意義を損なっているように感じるが、これが現実だ。加えて22年に新しいフォーマットに形づくられ、30チーム中12チームが進出できるようになり、最高のチームが世界一になる確率はさらに下がった。第1、2シードチームはワイルドカードを免除されることで5日間も休めるが、結果的に準備が難しくなっている。 ブレーブスのブライアン・スニッカー監督は、ワイルドカード・シリーズを制し勢いに乗るフィリーズに2年連続で1勝3敗と敗れ「5日間のオフは勢いを保つには好ましくなく、難しかった」と悔しがっている。 加えてホームフィールド・アドバンテージの効果も薄い。昨年のポストシーズンでホームチームは15勝26敗(勝率.366)で53年間のポストシーズンで最悪だった。18年以降、勝てばシリーズを制するという最終戦の結果もホームチームが6勝10敗である。 もともとNFLやNBAのようにスタンドのファンがノイズで相手チームのコミュニケーションを妨げて優位に立つこともない球技。加えて遠征中、チームは同じホテルに一緒に過ごしグループとして結束しやすい要素もある。今のメジャーでは下克上は当たり前、もはや予想外はなくなったとも言えよう。 文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール