【霞む最終処分】(49)第9部 高レベル放射性廃棄物 玄海町(上) 原発の町示した矜持 「適地」選定の呼び水に
◇ ◇ 住民が「原発がなければ、玄海はない」と言うほど、町は原発立地の恩恵に浴してきた。2基が廃炉となったものの、町の財政は潤いを保っている。100億円規模の一般会計当初予算のうち、歳入の6割程度は電源3法交付金や固定資産税など原発関連だ。町の財政需要に占める収入の割合を示す「財政力指数」は1・18(2022年度)。人口は県内の20市町で最少ながらも、県で唯一、財政面で豊かとされる地方交付税不交付団体となっている。 「お金目的じゃない。その言葉通りだ」。町旅館組合の男性組合長は脇山の発言に同調した。玄海原発の目と鼻の先にある旅館で育った男性は、北海道を舞台とした高レベル放射性廃棄物最終処分の動きに関心を寄せてきた。一向に全国的な議論にならない現状にもどかしさを募らせていた。昨年11月から組合員と協議を重ね「廃棄物の発生原因を有する自治体の責務として、国に協力すべき」などとする請願を起案した。
組合を含む町内3団体がまとめた文献調査を求める請願は4月、町議会に受理された。「調査への応募、受け入れの考えはない」と首尾一貫した発言をしてきた脇山の心は、揺れ動くこととなる。(敬称略)