鴻海会長「世界展開がトランプ関税から当社を守る」
台湾電機大手の鴻海(ホンハイ)精密工業は、トランプ次期米大統領による新たな関税の影響は、競合他社よりも少ないと述べた。世界展開している製造拠点網が、同社を「トランプ関税」から守るという。英ロイター通信などが報じた。 ■ 劉会長「当社への影響は比較的軽微」 台北で開催されたフォーラム後の記者会見で、鴻海董事長(会長)兼CEO(最高経営責任者)の劉揚偉(ヤング・リウ)氏は、新たな関税の影響は主に顧客側に及ぶとの見解を示した。その理由として、同社のビジネスモデルが受託生産に基づいていることを挙げた。 「顧客は生産拠点の移転を検討するかもしれないが、鴻海は既に世界展開している。このことを考えたとき、我々は先行していると言える。当社への影響は競合他社と比較して小さいだろう」(同) ■ トランプ関税への対応策を準備 トランプ次期米大統領は2024年11月25日、自身のSNSへの投稿で、中国からのほぼ全ての輸入品に対して追加で10%の関税を課すと表明した。カナダやメキシコについても、25年1月20日の就任初日に25%の関税を課すための大統領令に署名すると宣言した。 これについて劉氏は、「今、起きていることは企業間の争いではなく、国家間の駆け引きだ。それが25%であろうと、追加の10%であろうと、彼らが交渉を続けている限り、結果は不透明だ」とした上で、「我々は常に状況に適応し、世界戦略を洗練・改良し続けている」と述べ、トランプ関税への対応策の準備ができることを示唆した。
■ 鴻海、メキシコへの投資を継続 鴻海はサプライチェーン(供給網)の多様化の一環として、米国やメキシコ、ベトナム、インドなどの国々への投資を拡大している。 24年10月には、米エヌビディア(NVIDIA)の次世代半導体「GB200」を搭載したAI(人工知能)サーバーを製造するための、世界最大規模の工場をメキシコで建設中だと明らかにした。 鴻海は、電子機器の受託生産サービス(EMS)の世界最大手で、米アップルのスマートフォン「iPhone」の組み立て業務を請け負うほか、サーバーの製造も手がける。最近は電気自動車(EV)の受託生産事業にも進出した。 ただ、鴻海は中国国内に数多くの巨大工場を持ち、その中には世界最大のiPhone工場もある。同社は依然として中国への依存度が高く、メキシコやインドでの現地生産、すなわち「地産地消」への移行ペースは遅いと言われている。 今回の記者会見で劉氏はメキシコへの投資を継続すると強調した。同氏は、現地生産のトレンドが加速しているとし、「人口1億人を超え、南米市場に近接しているメキシコは、大きな機会をもたらす」と自信を示した。 ロイター通信によると、鴻海は今回、子会社が米南部テキサス州ハリス郡の土地と工場の建物を3300万ドル(50億円)で購入したことも明らかにした。 前述した通り、鴻海は電子機器の受託生産サービス企業である。しかし、最近はサーバーやEVの受託生産へと、スマホ以外の分野にも進出している。将来はサーバーや自動車も、スマホや半導体のように受託生産企業が、それぞれの消費国で活発に製造するようになるとみている。
小久保 重信