「専業主婦は普通ではない」「年金は退職後ではない」……年金改革4つの課題
2025年に行なわれる予定の公的年金改革の課題として、いくつかの問題が浮かび上がってきた。3号保険者と在職老齢年金の問題は方向付けは明らかだが、基礎年金救済問題は難しい。厚生年金収支の問題はさらに難しい。 【写真】「100年安心年金」の公約は破綻した――いま大改革を行わなければ手遅れに
「専業主婦が普通」という時代遅れの制度は廃止せよ
年金改革の第1の課題は、3号保険者問題だ。 現在の制度では、被用者の配偶者は「第3号保険者」とされていて、基礎年金の保険料を払わなくとも、基礎年金を受けられることになっている。 厚生労働省の説明によると、「厚生年金の加入者が全体として、3号保険者の保険料を負担している」というのだが、いかにも不自然なこじつけだ。 これは、専業主婦が普通の時代だった時代の考えだ。共働きや独身者が増えた現代においては、明らかに不公平な制度であり、改革の必要性は明白だ。
「年金は退職後」という時代遅れの制度は廃止すべし
第2の問題は、在職老齢年金問題だ。 現在の厚生年金制度では、65歳から年金を受給できる。しかし、65歳以降も働き続けて給与所得を得る場合には、年金の一部を削減される。 このようなことになっているのは、厚生年金は退職が支給の条件になっているからだ。働き続けているのなら、年金は必要ないだろうという考えだ。 この考えによれば、65歳になっても、給与所得を得続ける人には、厚生年金は支給されない。しかし、特別に「在職老齢年金」という制度を作り、年金を一部削減した上で、特例的に年金を支給するものだとされている。 しかし、いまや、高齢者の就労は普通になった。政府も、高齢者の就労を促進すべきだとしている。そして、70歳までの雇用を企業に対して要請している。労働力不足の日本において、高齢者の就労は、重要な政策課題だ。 こうしたことを考えれば、退職を厚生年金支給の条件とする考えは、改めるべきだろう。そして、65歳になれば、給与を得ているかどうかに関わらず、厚生年金を支給する仕組みに転換すべきだ。 以上で述べた2つは、現在の年金制度が現代社会の仕組みに適合しなくなっているという問題だ。したがって、解決の方向付けは明らかだ。 もちろん、その方向付けに反対の人もいる。第1の問題について言えば、保険料の負担を求められる現在の第3号保険者からの反対は避けられないだろう。それをどのように説得していくかが、政府に課された問題である。 在職老齢年金の廃止について、受給者から反対はないだろう。問題は、これによって年金支給額が増えることだが、それが、さほど大きなものではない。 これに対して、以下で述べる問題は、年金財政の収支に関わる今後の問題であり、対処が極めて難しい。どのような方向付けを選択すべきかについても、様々な意見があり得る。 年金制度が抱える様々な問題を単に列挙するのではなく、問題の深刻度や重要度の違いを理解することが重要だ。