カギは健康診断! PSAで前立腺がんの早期発見【あなたの知らない前立腺がん】
前立腺では、PSA(Prostate Specific Antigen、ピーエスエー=前立腺特異抗原)というタンパク質が作られています。PSAの役割の全貌は明らかになっていませんが、精液中に含まれるゼラチン状の物質を分解し、精液を液状化する役割を担っていて、精子の運動性を向上させることが知られています。前立腺がんになると、PSAが多く産生され、血液中に入り込むPSAも多くなります。
◇優れた腫瘍マーカー
PSAは、血液検査で簡単に測定できます。日本では、年齢ごとにPSA値の異常値が設定されていて、この数値を超えた場合には、泌尿器科専門医を受診することが勧められます。このように、がんの発見に役割を果たしている血液検査を腫瘍マーカー検査と言います。肺がん、大腸がん、膵臓(すいぞう)がん、肝臓がんなど、他のがんにも腫瘍マーカーはありますが、PSAのように前立腺がんを早期に発見できる能力を持つと同時に、一般的に普及している腫瘍マーカーはありません。 かつて、「PSAを測定して前立腺がんを早期に発見しても、患者さんの寿命を延長させることはできない」「過剰な検査や治療に結び付くため、PSAの測定を検診に導入することは勧めない」などといった泌尿器科専門外の方のコメントが発表されたこともありました。今でも市区町村の中には、PSAを検診として実施できない地域もあるのは、とても残念です。
◇進行がん、死亡率減少
最新の研究では、PSAを測定することが患者さんの寿命を延ばすだけではなく、医療に要する費用も縮小する効果があることが明らかにされています。スウェーデン第2の都市であるイエテボリ。ここで住民2万人を対象に大規模な研究が行われました。住民をPSAによる検診を行ったグループと、行わなかったグループにランダムに分け、その後の長期間の経過を記録しました。その結果、検診を行ったグループの方が、検診を行わなかったグループよりも転移が出てしまう進行がんの割合が10年間で49%低いという結果が得られました。さらに、14年後の死亡率を比較すると、検診を行ったグループの前立腺がんによる死亡率が、検診を行わなかったグループよりも44%低かったことも報告されました。ほとんどのがんは、転移が出てしまうと完全に治すことが難しくなってきます。そうすると、長期間にわたって薬物治療などが必要になるため、早期がんよりも医療に要する費用は多くなります。このように、前立腺がんの早期発見のために、PSAを利用した検診がとても意義のあることが明らかとなったのです。