米国経済・物価指標の下振れで1ドル153円台まで円高が進む
日本経済の先行きを左右する為替と米国経済動向
一方日本では、16日に発表された2024年1-3月期GDP統計で、実質個人消費がリーマンショック時以来の4四半期連続の減少となるなど、個人消費の異例の弱さが見られている。その背景には、円安進行による物価高の長期化懸念があるだろう。 政策面での対応で、個人消費の安定回復を助けることができるとすれば、それは個人の物価高懸念を煽る円安進行に歯止めをかけることだ。既に為替介入を実施していると考えられる政府と日本銀行とが、為替の安定回復に向けて強く連携する姿勢を見せることが、実際に円安に歯止めをかけ、歴史的な弱さを見せる個人消費の回復の第一歩となることが期待されるところだ。 他方、米国経済・物価の下振れ傾向がこの先より鮮明となり、米国での金融緩和期待が強まれば、円安の流れに歯止めがかかり、物価高懸念が緩和されることで国内個人消費の安定回復を助けるだろう。 しかし、米国経済が顕著に悪化してしまう場合には、今度は、輸出環境の悪化によって、日本経済は年後半に失速するリスクが生じてしまう。国内個人消費の回復を助ける円安修正を生じさせる一方、日本の輸出環境を損なわない程度の適度な景気減速が米国で今後生じるかどうかについては、不確実だ(コラム「円安・物価高で個人消費は未曽有の弱さに(1-3月期GDP):強まる円安の弊害」、2024年5月16日)。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英