日本財団、子どもの貧困対策に50億円 貧困の連鎖を断つ解決策を検討
日本財団とベネッセホールディングスは23日、子どもの貧困対策プロジェクトを推進させると発表した。貧困家庭の子どもたちが自立に必要な力を養える拠点として、家でもなく学校でもない“第三の居場所”を全国に計100か所設置する方針。親から子に貧困が伝わる「貧困の連鎖」は社会問題になっており、同財団は50億円を用意し、今年11月に埼玉県戸田市に第1号拠点を設ける予定。同市の神保国男市長は、「経済的に厳しい家庭の子どもたちが、夢を持って未来に邁進できるような場所にしたい」と話した。
同財団によると、日本の子どもの貧困率(平均的な可処分所得の半分以下の世帯の18歳未満の子どもの割合)は2012年に16.3%となり、6人に1人の子どもが貧困状態にあるとされる。大人が子どもに生活習慣や価値観などを伝える「社会的相続」では、自制心を含めて自立に必要な力や価値観が伝承されなければならないところ、親が浪費する姿を見て育つとその浪費癖が子どもにも伝承されるなど、自立を妨げる「負の社会的相続」が生じている可能性がある。 “第三の居場所”は、この社会的相続の補完機能を持たせるのが狙い。専門スタッフや大学生らによるボランティアを配置し、子どもが安心・信頼して話せるような関係を築けるよう努める。スタッフと遊ぶなどの関わりのなかで、あいさつや道具の整理整頓、時間を守るなど適切な生活習慣を養う働きかけをおこなう。学習支援では、個々の状況に応じた教科の自発的な学習を手伝うほか、読書や書籍の読み聞かせを通じて基礎学習力や意欲の向上を狙う。 入所対象は、3、4歳から10歳程度の子どもを想定するが、求めがあれば中学生の受け入れも検討するなど臨機応変に対応する。利用料金は、各世帯の所得に応じて負担を求める方針。夕食も希望に応じて提供する。その際、子どもたちは夕食の用意や食事、片付けにも関わることで、生活習慣の習得につなげる方針。開所時間は平日で、小学校低学年が下校する午後2時ごろから午後9時ごろまでを予定している。 日本財団の笹川陽平会長は「財団職員が子どもと面接した時、『将来何になりたいか』と聞くと、『うちは生活保護でお父さんも生きてきたから、僕も生活保護で生きていく』という答えがあったと聞き、非常に深刻な状況にあることをあらためて痛感した」と話していた。 (取材・文:具志堅浩二)