「完全な非核化」への視界は一段と明るく 南北首脳会談どう見る
非核化実現が平和協定締結の条件か
全体を通じて、南北双方は、今回の会談を来る米朝首脳会談へとつながっていく過程の中でとらえていたことが特徴的でした。トランプ大統領はツイッターに「ミサイル発射や核実験の激しい1年のあと、南北の間で歴史的な会談が行われている。良いことが起きている」と今回の会談を評価しています。米朝会談が成功するか否かを占うのは早すぎますが、双方の努力次第です。 「非核化」については前述しましたが、米国が関与するもう一つの問題は、朝鮮半島の「休戦協定」を「平和協定」に転換することです。この問題については、「今年中に、南北に米国や中国を加えて休戦協定を平和協定に転換する」との目標が盛り込まれました。米国は、「非核化」が実現しなければ平和協定を結ばないとの考えだと思われます。
金正恩委員長は、核・ミサイルの開発が“完成”したのを背景に、経済制裁などの圧力を受けて平和路線に転換し、韓国側に大胆に飛び込んできました。文在寅大統領はこれをしっかりと受け止め、地域の緊張緩和を図りながら、米朝会談の実現に貢献しました。今回の会談は、制裁にしても、また「非核化」にしても韓国として自由に決めることができないという困難な状況の中で開催されましたが、文氏は巧みな外交手腕を発揮し、会談を成功に導いたと言えるでしょう。 一方、金正恩委員長の自信に満ちた振る舞いや、言葉の中に冗談を挟んで会話を盛り立てていたことなどが印象的でした。今回の文在寅大統領との会談を背景に、トランプ米大統領との会談をも成功させ、「完全な非核化」の実現に近づく見通しは一段と高まった印象です。
---------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹