【とっておきメモ】オニャンコポンで見せた鋭い感性が今回の勝利を…「勝負師」菅原明良
<とっておきメモ> <宝塚記念>◇23日=京都◇G1◇芝2200メートル◇3歳上◇出走13頭 大歓声が起こる雨中の淀で、ブローザホーン(牡5、吉岡)に騎乗した若武者、菅原明良騎手(23=高木)の大胆不敵な仕掛けがはまった。涙の重賞初制覇だった21年東京新聞杯(カラテ)のガッツポーズから約3年半、今回もその瞳は潤んでいるように見えたが、関係者に出迎えられ、最高の笑顔でG1ジョッキーの仲間入りを果たした。 トレセンではいつも深々と頭を下げ、大きな声で元気よく関係者にあいさつする姿が印象に残る。私たち、報道関係者に対してもそうだ。デビューから5年が経過するが、その謙虚な姿勢はまったく変わらない。 周囲に笑顔を振りまく一方で、勝利に飢えるハングリーさも持っている。3年前、新成人の目標について取材した時は語気強く語った。「年齢は関係なく、もっとたくさん勝ちたいです。目立ちたい。同期に負けないようにしたいと思っています」。普段の明るく振る舞う姿とは違う、勝負師としてのまなざしだったのを覚えている(競馬学校35期生の同期は岩田望、大塚、亀田、小林凌、斎藤、団野)。 記者が個人的に忘れられないレースがある。21年の京成杯。デビューからコンビを組むオニャンコポンで、それまで結果を残していた先行策から一転、中団待機策から豪快な差し切りを決めた。管理する小島師をはじめとした関係者の度肝を抜く、“菅原明良らしい”勝利だった。 このときのレース運びについて、後日聞いてみたけれど、彼は「馬が強かったです。本当に馬に助けられています」と謙遜するのみ。周囲の人も認める“感性の騎手”だ。 上半期を締めくくる大一番、宝塚記念へ向けた吉岡厩舎の素晴らしい仕上げ、携わる関係者とファンの期待に応え、強い雨の中の競馬でブローザホーンのリズムを重視した鞍上の騎乗スタイルが今回の勝利、あの劇的な大外一気を呼び込んだ。6年目の23歳。類いまれな感性、鋭い感性を今後も磨き続け、「勝負師」菅原明良はアッと驚くレースを次々と見せていくに違いない。【井上力心】