Creepy Nutsのアニメ『ダンダダン』主題歌を楽曲分析 奇怪さの秘密はリズムにあり
「オトノケ」の奇抜なビートとラップのポリリズム
閑話休題。では、中心となる<ダンダダンダンダダンダンダダンダンダダン…>のリズムパターンを見ていこう。 リズムの軸は付点32分音符(休符)。2小節(4/4拍子、BPM170)の間に、小節の頭から「ダ(付点32分音符1つ)・ン(付点32分休符3つ)・ダ(付点32分音符1つ)・ダ(付点32分音符1つ)・ン(付点32分休符2つ)」を5回繰り返す。 図解するとわかりやすいが、1小節目の頭からこのパターンを機械的に繰り返すと、2小節目の頭とリズムが重ならない。 4/4拍子を基準に考えてみると、1小節目の1拍目・4拍目と2小節目の2拍目しかリズムが重ならない。つまり「オトノケ」のジャージー・クラブ調のビートとラップや歌はポリリズムになっている──これが異質さの正体だ。
オカルト×SF×青春物語『ダンダダン』OP主題歌として抜群の出来
とはいえ、本楽曲のような付点32分音符を軸にしたリズムパターンが、過去のヒップホップで使われてなかったわけではない。 有名どころから例を挙げるなら、Eminemさんの高速ラップで知られる「Godzilla ft. Juice WRLD」でも、冒頭から似たリズムパターンのライミングが行われている(SNS上では、本楽曲を聴いたリスナーの間で「Godzilla」を彷彿とさせるという反応も見受けられる) ただ、「Godzilla」の場合、あくまでもリズムを変化させることによる強調(=アクセント)的な側面が強かった。 しかし「オトノケ」では、連続してこのパターンが反復されていることで、もはやそのリズムでグルーヴが形成されてしまっている。 等間隔な8ビートや16ビート、あるいは三連符を軸にしたリズムに親しみのあるリスナーには、良くも悪くも奇抜で斬新に映るだろう(実際、筆者もその口であることは否めない)。 しかし、だからこそ『ダンダダン』のオープニング主題歌としては、抜群のクオリティに仕上がっている。 オカルトとSFと青春物語を融合させた『ダンダダン』も、「オトノケ」に負けじと劣らない、奇抜で斬新な物語なのだから。
都築 陵佑