交通事故の死者倍増 長野県が「非常事態宣言」
交通死亡事故が多発している長野県で7日、県交通安全運動推進本部が「交通死亡事故多発非常事態宣言」を全県に発令しました。1月に軽井沢町で起きたスキーバス事故の死者15人を含め10月6日現在で昨年同期の倍の96人が死亡、すでに昨年1年間の死者69人を大きく上回っています。夜間や高齢者、歩行者の事故などが目立ち、同県に限らず全国でも事故防止の課題は共通。県警などはこの日から街頭活動で事故防止を呼びかけ、指導を強めています。 【写真】交通事故の「星座別」まとめに賛否両論 愛知県警の狙いは?
16日まで事故防止へ緊急対策
事故を内容別にみると、単独事故の死者は48人と前年同期比30人の増加。夜間の事故の死者も45人で25人増。65歳以上の高齢者の死亡事故は48人で19人増でした。交通事故そのものは10月5日現在で6038件と前年同期比543件減っていますが、県によると死者の増加は過去10年間で最悪のペース。 このため7日から16日までの10日間、事故防止の緊急対策として、(1)交通安全意識の高揚のため街頭や高齢者宅の訪問による安全対策のPR、夜光反射材の普及、車のライトの上向き・早め点灯、(2)事故原因の分析や事故多発地点などの調査・分析、(3)夜間や週末の交通指導取り締まりの強化、パトカーによる注意喚起の活動――などに取り組みます。
このうち車のライトの点灯は、帰宅時間と日没が重なりやすい夕方の危険を避けるため「午後4時過ぎからのライト点灯」を呼びかけ。また、最近注目されているライトの点灯方法も上向き点灯(ハイビーム)を基本とし、「こまめにライトの上下切り替えをして歩行者をいち早く発見しよう」と訴えています。
夜間は歩行者の死者の割合が増加
長野県警は「死亡事故は増えているが、事故は減っているという特殊な傾向を示している。運転者と歩行者の双方が油断や過信をなくすよう啓発したい。反射材を着けていなかった犠牲者がほとんどだったのも残念」と話しています。 長野県の状況は全国とも共通。警察庁の統計によると、2016年8月末までの交通事故死者に占める高齢者は1318人で、全体の53.8%と半数以上。高齢者の比率は10年前の2006年の42.2%から10ポイント以上も増えています。 同統計による昼夜別の死者数を見ると、昼間では自動車運転中の死者が41.8%と最多で、歩行者は20.3%。これが夜間になると「歩行中」の事故による死者が48.7%と半数近くを占め、夜間の歩行者の安全対策が求められています。 また、年齢別の昼夜の死者数では、昼間は高齢者が6割、夜間でも高齢者が5割近くを占め、昼夜を問わず高齢者の事故防止が課題になっています。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説